VOCALOID学園 第17話「揺れる恋ゴコロ」
「レンくん~!」
マユがレンくんにくっついてる。私は寝不足でくっつかない。
「リリィ!どうしたの?テスト、自信ない?」
「う、うん・・・まあね」
「ん、でも大丈夫だよ!」
「とにかく寝させて・・・」
変なの、とマユは呟きレンくんの元へ戻った。
最近勉強に手がつかない。やはり私もテイさんのように身をひき、マユとレンくんの幸せを祈るべきなのだろうか?
「テスト返すわよー」
言和先生がやってきた。(産休に入った先生の代わりにやってきた中国人の先生)あーどうなるかな。今回は工作してないけど。
そして、工作なしの私のテスト結果が返ってきた。
合計、420点。判定、B。
「えっ・・・B!?」
「リリィ・・・」
あのリリィが!?と大騒ぎになる。
私は落ち着こうと思いあの教室に向かった。
「あ」
意外にもミク先輩がいた。
「どうしたんですか?」
「いやあ、ちょっとヤバイ点数とっちゃってね・・・えへへ」
ミク先輩の手には300点の文字が書かれた紙が。ぎりぎりだ。
「・・・私、Bに下がったんです」
「えっ!?」
「わ、笑えますよね?本当に・・・」
「うーん、でも私だってBにいるのはギリギリなんだからまだ大丈夫だよ」
「・・・」
その時、誰かがやってきた。短い金髪に青い目・・・リンだ。
「バカイト先生に迎えに行ってって言われたから来たの」
「あ、そうなの?」
「それじゃ、またね」
「はい・・・」
気まずい空気。私が陥れた相手と並んで歩いてるなんて。
「あ、あの・・・あなたを友達と引き離したのは私なの!」
「・・・」
リンは黙っていた。すると、立ち止まり、私の方を見た。
「そんなの、気にしてないよ。おかげさまで更正できたし。それに、レンが好きなんでしょ!?頑張りなよ!」
「・・・え、怒らない?」
「もちろん!当たり前だよ」
私は、嬉しかった。
リリィと寮の部屋が離れた。一時的なものだから、必要最低限なもの以外はまだ部屋にある。
「本当にどうしたんだろ、リリィ」
夕食もぼんやりととる。
すると、隣にレンくんが座った。
「マユ、一緒に食べていいか?」
「レ、レンくんっ!?い、いいよ」
「リリィのこと、心配か?」
「当たり前よ。だって、私に新たな出会いをくれた親友なんだから」
「そうなのか・・・」
夕食時にレンくんから来てくれるなんて、本当に嬉しい。
「マユは本当にご飯の量少ないんだな」
「う、うん。女の子だから色々気にしてて。マグロ丼なら量も少ないからいいかなって・・・。うふふっ♥」
もちろん、私の方が先に食べ終わった。立ち上がろうとした時、レンくんが引き留めた。
「俺が食べてる天ぷら定食。天ぷら、一個いるか?」
「え、そ、そんな、いいよ」
「ほら」
つい、あーんと口を開けてしまった。わ、私が今までお昼にレンくんに散々してきたことだ。逆にされると、すごく恥ずかしい。
「お、おいしい・・・」
始めてここの天ぷらを食べた。
「引き留めてごめん。じゃ、お休み」
「うんっ・・・」
リリィには悪いけれど、とても幸せ。
「キマシタワーーーーー!!」
「め、迷惑になってるよ」
「ハクの言うとおりだよ」
ネル、リン、ラピス、いろは、グミが叫んだ。正直うるさい。
「えーだって、レンがやっとちゃんとアピールしたんですから、しかもあーんですよ!」
「リンちゃんの言うとおり!これは本当にキマシタワーな展開!」
「いい展開にゃ」
「そうだねえ~」
「!」
グミちゃんが立ち上がる。どうしたのかな?
「嘘・・・」
リリィが立っていた。マユはもう去っていたが、レンくんがそっちの方を見ながら顔を赤くしていた。それだけでリリィは全てを理解してしまった。
「こんなのあんまりだよ!」
「うわわ・・・」
リリィは止める間もなく、飛び出していく。
「いわゆる修羅場だね」
「鳥音~!さらっと言わないでよー」
「どうするの?」
「まあ大丈夫だよ、きっと」
「レンくん・・・」
私は勢いで飛び出してしまった。私の望んでいた幸せは、もうない。とりあえず売店でカップラーメンでも買おう。
「ささら、私はカップラーメンがいい」
「私も」
「え、ちょ、マキさんもつづみも私をパシる気ですか」
「当たり前だ」
放送の為に雇われているというアンドロイドがいると聞いたが・・・人間なの!?
どうやら吉田くんやタカハシくん以外が揃っているらしい。
「ちなみにタカハシくんはお弁当、吉田くんは何でもいいらしい」
「仕方ないですね」
私はそれを呆然と見送る。っていうかヤバくない!?元からすぐ売り切れるというラーメン・・・。仕方ない、戻ろう。
「リ、リリィちゃん」
「せ、先輩・・・」
心配性のミク先輩が待っていた。私はどう反応しようか迷ってしまった。
「戻ってきたってことは大丈夫なの?」
「え、あの、ささらさんたちが売店を利用するから私は仕方なく。ていうかミク先輩なぜここに!?」
「し、宿題が終わらなくて特別に泊まるの・・・。えへへ」
なぜか笑顔で答える。お馬鹿の証拠丸出し。
「まあ、もうレンくんは部屋に戻ってるから大丈夫だよ。うん。でも食堂利用者だいぶ減ってるし一緒に食べない?」
私のことでも話してたのか、皆の食事の手が止まっていた。
「リリィちゃん、大丈夫?本当に?」
本当に心配してくれたようだ。