神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

VOCALOID学園 第14話「お別れ(後編)」

 パーティの食事は全て、ミキ会長が用意してくれることになった。最初は「え~私の料理、ピコ君のためなんだけど・・・」とぼやいていたものの、「ミキちゃんの料理、美味しいからみんなにも食べてもらいたいよ♡」「ピコくん♡」「馬鹿じゃねえの?」となり、おかげで作ってもらえた。
「ふう。だいぶ準備できたね~」
「そうね、じゃあミクは留年が危ういから勉強しようか」
「えっ、メイコ先生いつの間に」
 私はこの1年間、赤点を取った回数が9回。11回中の9回。おかげで、3月の最終テストの前に追試を受けなければいけなくなってしまった。
「天才テト様が来たんだから大丈夫なんだお!」
「・・・はい」
 メイコ先生の幼馴染というテトさんは、あのがくぽさんの天才能力を奪ったらしい。恐るべし。
「そういえばテイさんとがくぽさん知らない?」
「え、ネル。さっきまでここに・・・っていない」
「馬鹿じゃねえの?さっきでていったぜ」
「嘘!?」
「あ、僕も見ましたよ」
 あの2人のことが気になる。でも、私は勉強・・・。ううっ。

「え?ハルさん?」
「あ、はい。あなたのお母さん・アキさんの双子の姉と聞きました」
「さあ?私、お母さんから何も聞いてないのよ。で、そのハルさんが会いたいと?」
「はい」
「・・・構わないわ。今、呼んでくるから」
 しばらくして、アキさんがやってきた。80代だからか、背は丸くなり、頭は白髪。杖をついている。
 旧校舎に連れて行き、その問題の教室に。事情を説明する。
「ハルが幽霊に?ありえないねえ。あんなに昔からずうっとい続けるなんて」
《このバカアキ!!人の大好きな人を惑わしておいて、何幸せな家庭を築いているの!?》
 ハルさんが、大音量で叫ぶ。途端に、アキさんが泣き崩れる。
「どうしたんだい?」
「賢!」«賢さん!»
 なんと2人の意中の相手であり、アキさんの夫が現れる。なあんか、レンくんを取り合う私やマユ、リリィを悪化させたバージョンみたいね。
«どうして私に振り向いてくれなかったの?ネエ、オシエテ»
 私は、何か似た雰囲気を感じとった。そして、彼女が包丁を取り出した瞬間、確信に変わった。
「皆さん!避難して!」
「ここは拙者に任せるでござる!」
 アキさんたちを避難させる。アキさんたちに話を聞くことに。
「私と賢は付き合う気はなかったんだよ。でもねえ、噂ってのは怖いもんだよ。百合ちゃんっていう私の友達がいたんだけど、彼女が私と賢が付き合っているという噂を流してねえ・・・」
「彼女はそれがハルの自殺原因だと知ると、必死に謝ってくれた。だから許したんだが、もう遅かった。俺とアキはその時本当に結婚を考えて付き合ってたんだ」
「そうだったんですね。噂に惑わされて・・・」
 そういえば、と私は思い出した。
「ある中学校で殺人未遂事件が起きたの知ってますか?」
「ああ。知ってるよ」
「それも噂が原因で一人の少女が暴走し、友達を斧で刺したそうです」
「あらあら。怖いわねえ」
 旧校舎の外に出ると、ダン、ナオ、メルの3人が待っていた。
「何してたんだよ」
「あなたには関係ない。ルカさんやこの人達に関係すること」
「よくわかんないですね、ナオさん」
「うん、そだね」
「さて私はもう帰りますよ。姉にも久々に会えたことですし」
「そうだね」
 2人を見送り、私はルカさんを迎えにいくことに。
「ルカさん♪パーティ行きましょうよー」
「あら。もうそんな時間?じゃあね」
 すっかり打ち解けたようでよかった。
「テイ殿~!」
「あ。大先輩。どうでした?」
「沈めれたでござる。なんか、その、アキ殿たちの話が聞こえたようで」
「え?何かあったの?」
「ああ、うん。まあね。ハルさんは噂を信じこんで自殺したらしいよ」
「そうだったの?」
 パーティ会場につくと、おいしい匂いが充満していた。

 卒業する私たちのために・・・。わざわざミキが手料理を作ったという。とても嬉しいわ。
「あ、先輩!こんちわっ」
 リンはなんと、来年からBに上がることを先生に言われたらしい。そしてグミと仲直りもしたとか。
「今までありがとうございました」
 ミキちゃんとピコくんから花束を貰う。迷惑かけてばかりで、ごめんね。
「先輩!この料理おいしいにゃ」
「あらあら。いろはちゃんったら」
 他にもラピス、グミ、ネル、ハク、ミクがいる。
「卒業おめでとう」
「ありがとうございます」
 メイコ先生からなんと、新しいギター。嬉しい。
「さあ呑むわよーー!」
ソニカ先生!負けないわよ!」
 なぜかソニカ先生までいる。てんやわんや。
「本当に楽しいわ。ありがとう」
「いえいえ♪」

 楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
 楽しいことも、つらいこともあった。
 でも私はとても充実した15年間を過ごせた。
 ありがとう、先生。
 ありがとう、後輩たち。
 そして
 ありがとう、友達。

 さよなら、璃々杏学園。