神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

VOCALOID学園 第9話「生徒会事情」

 私はもうすぐ大学生になるというのに、希望する学科が見つからない。あの子が私をかばって事故で亡くなるまでずっとついていったのが悪かったんだろう。頭痛がする。
「ルカさん、書けましたか?」
「あ、まだです・・・すみません」
「パンフレットを読んで早く決めてくださいね」
 もう何度もパンフレットを読んだ。でもいまいちピンとこない。
「はあ・・・」
「生徒会長、どうしましたか?」
「あら2人とも。どうしたの?」
「もうすぐ生徒会選挙応募受付始まるので準備を・・・」
「ああ、そうだったわね。毎年立候補者少ないから誰か誘ってくるわ」
「ピコくんと一緒に準備しておきます!」
「ミキちゃんと一緒に準備しておきます!」
 正直、今の生徒会には高等部女子書記がいない。中等部書記女子はリリィ、中等部書記男子はレン。この人達は自ら名乗りをあげたわけではないし、本当なら男子と女子はそれぞれ3人いる必要がある。
「ん、そうだ。ミクを誘おうかしら」
 彼女は今年からこの学園に通っている。外部合格者とはとてもまれだ。
 お目当てのミクを見つける。
「あら、ミク。ねえ少しいいかしら?」
「あ、はい。どうしましたか?」
「もうすぐ生徒会選挙なの。ミク、書記にならない?」
「えっ!?」
「返事はあとで聞くから」
 リリィ、レンはそのまま書記でもいいけど人手が足りないとぼやいていた。ミキはくりあがりで生徒会長になりたいと言っていたので助かる。ピコは副会長に。
 でも、人手がたりない。ミクだけじゃなくてハク、ネルも誘おう。うん、そうしよう。

「ネル、シュシュしらない?」
「え?シュシュ?」
「うん。ってあ!それ、今つけているの!」
「あーこれ?そのへんにあったから・・・」
「ヒドイ!おそろいで買ったじゃん!」
「え、う・・・」
「もういいよ!」
 ハクが出ていく。最近むしゃくしゃしてるのはわかるけど、どうしてあそこまで怒るのよ!
「ふわあ~まあいいか」
 私は少し寝ることにした。

「え、マユも生徒会にはいるのかい?」
「ええ(黒ハート)レンくんのためならどこまでもついていくわ!」
「私も、生徒会入りたいな」
「え、メルちゃんも?」
 卒音メルちゃん。少し恥ずかしそうにぽつりと言う。
「いや、人数たりないんでしょ?手伝いたいなって思って」
「ああ、うん。ありがとう」
 彼女は精神年齢が低いからレンに対して変に好意は抱かないと思う。うん、この子は安全。
「メル、頑張ろうな」
「да!」
 ロシア語ださなくても・・・。
「問題は男子、か」
「それならUTAU同盟メンバーに声をかけようか?」
「ああ、うん」
「なあんて私が言うとでも思ったか!」
「このドS女!レンくんを困らせないで!」
「・・・仕方ないわね、伝えておく」
 UTAU同盟について知りたかったけど、黙っておいた。
「じゃあ放課後、生徒会室で!」

「珍しいね、巡音さんがそこまで悩むなんて」
「・・・」
 クラスメイトからは尊敬の目で見られてきた。ある意味、私は孤独だった。
 大学部には音楽科(3年生になると教師専攻かアーティスト専攻にわかれる)、美術科、文学科。この3つだけなので余計悩む。
 私ってどれがいいのかしら・・・?メイコ先生に相談しよう。
「メイコ先生、あの・・・」
「え?どこに行くか?」
「っ!ご、ご存じなんですね」
「そりゃああなたの学年の先生、グチグチ言ってたから。どうして決めれないの?」
「私には決断力がないんです。友達が亡くなってから気づいたんです。ついてまわってただけなの?って」
「・・・あなた、夢は?」
「その友達と一緒に歌手になるつもりでした」
「いいとこ紹介してあげるわ。夢がはっきりしないのなら、大学は行かなくてもいい。「U」ってバンド知ってる?」
「いえ」
「もうすぐメジャーデビューするのだけど、健音テイ、欲音ルコ、重音テト、CUL。この4人じゃたりないらしいの」
「具体的になにが・・・?」
「作詞・メインボーカル、ベース、ドラム、キーボード。作曲とギターがいないから」
「あ・・・」
 私はギターをしていた。それを先生が思い出してくれた。
「よければ今度会ってみたら?」
「はい」
 嬉しい。素直に顔がほころんだ。

 放課後。どんな奴がくるかと右腕にリリィ、左腕にマユを連れて(べったりくっついている)生徒会室で待つことに。ミキ先輩とピコ先輩もいる。
「こんちわーす響音ダンです」
「時雨ナオです」
「時雨さんは3年生なんだって」
「えっ、それじゃあ」
「・・・馬鹿じゃねえの?メル、来年そいつ高等部だろ」
「いや、ちょうどいいよ。高等部の書記男子いないからさ。他に中等部男子書記候補いない?」
「ん、考えときまあす」
 そこにルカ先輩がミク先輩、ネル先輩をつれてやってきた。・・・あれ?
「あれ?ハクちゃんはどうしたんですか?」
「そ、それが・・・」
「ケンカしたらしいわ」
「ケンカ?ふん、馬鹿じゃねえの」
「ダン!つつしめ!相手は先輩!」
 ネル先輩は普段のあの明るさから一転してうつむいていた。
「私が悪いんです、先輩。ハクと一緒にでかけたり遊んだりしたことを忘れてしまう私が。もうすぐハクは従兄弟の家に引き取られるそうなんです。それでむしゃくしゃしてて・・・」
「従兄弟の家?」
「デルさんです。ここの、高等部の」
「あ、そうだ。俺いいアイデア思い付きました」
「何?ナオくん」
「デルさんもハクさんも生徒会に入れれば人数が大分揃いますし」
「お、ナオ先輩さえてる!」
 マユとリリィは一言も喋らず黙って聞いている。こういうときは大概怒っているときだ。
「んで、そこの女子たちはどうなんだ?ずっとくっついているけどよ」
 ダンがマユの肩に手をおこうとすると、マユが斧をとりだし、振り回す。ダンはよけるものの、少し指をかすめる。
「おいおい・・・なんだよ」
「サワラナイデ」
 マユが怒っている。怖い。
「私はレンくんとくっついていたいの!ね?いいでしょ!?」
「特別に許可するわ。ダン、落ち着いて。彼女とリリィはレンくん依存症なんだから」
 とうとう公言してしまった・・・。俺に冷たい目が向けられる。
「モテ男はツラいな」
「・・・」
 とりあえず無視しよう。
「ねえレンくん。生徒会、人数増えるの?」
「ああ。ここにいるダン、俺、リリィ、マユ、メルが中等部書記でナオさん、デルさん、ハクさん、ネルさん、ミクさんが高等部書記という案だ」
「え、おい」
「安心して。私たちはレンくんの側から離れないから」
「・・・」
 その言葉に、場の空気が凍りつく。それを空気が読めないリア充が壊す。
「じゃ、ミキちゃんが会長だね」
「きゃっ♡ピコくんったら!それじゃあピコくんが副会長だね」
「えへへー」
 呆れたように横でリリィがため息をつく。
「じゃあ解散☆」
 ルカさんは珍しくおどけて言った。

 生徒会選挙では無事希望どおりとなった。私はカイトの家にいた。
「カイトーいつ結婚したい?」
「んーまだ付き合って数ヵ月だし、来年かさ来年のクリスマスにしようよ!」
「そうねー私も早くウェディングドレス着たいし」
「クリスマス会で結婚式一緒にやるのもいいよね」
「もう、恥ずかしいわよ」
「今日は一緒に・・・寝る?」
「うんっ」

「一段落したわ」
 私は、笑顔でこの校舎と別れることができそうだ。