神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

VOCALOID学園 第10話「こいする女の子」

「リツくん!」
「ぼくはおんなのこだ!」
「えー」
 わたしの名前は歌愛ユキ。おひめさまなの。今日はリュウトくんがお休み。少しつまんない。
「リツくんにはこんやくしゃっているの?」
「は?」
「ユキはね、キヨテル先生なの。でもリュウトくんが好き」
「え」
 波音リツくんは「男の娘」というものだってキヨテル先生が言ってた。いみは知らなくっていいって。
「ユキはおひめさま、プリンセスなの!」
「・・・」
「うふふっ」
「ばかだとおもうけど」
「え~?」
「はーいリツさん、そろそろ教室に戻ってください」
「あ、はい先生」
 リツくんが戻り、少し寂しい。
「今から算数の授業を始めます」
「はーい」
 今日はリュウトくんがいないからわたしつまんない。大好きなじゅぎょうもつまんない。
「ユキさん?聞いてますか」
「あ、はい先生」
 なんでこんな先生としなくちゃいけないのかなあ。
 放課後。アイちゃんと一緒に帰る。
「アイちゃん。リュウトくんって大じょうぶかなあ」
「きっとだいじょうぶだよ、ユキお姉ちゃん」
「うん・・・」
 少し心配しながらも、アイちゃんをいえにユキはおくったあとリュウトくんの家にいった。
「あのーリュウトくんいますかー?」
『ああ、ユキ?僕は大じょうぶだよ』
「ユキ、心配なの!」
『ごめんね、いまお母さんがいないしうつしちゃうかもしれないし』
「・・・あしたはぜったい学校にきてね!こなかったらユキ、さびしくてないちゃう!」
 私ははしっていえにかえった。

 私はマユ!恋する女の子!リリィの両親が引っ越すと聞いてびっくり。しかしついていかない、と言ったら両親に怒られたらしい。
「私はレンくんの側がいいのに。ね!」
「うん。でもさ、寮に預けておいてどうして伝えに?」
「・・・パリに行くって」
「え!?」
 リリィの家も立派。でも、そんなことよりもリリィの意思を最優先させる家と聞いたことがある。
「それはおかしいわ。どうして??パリに?」
「・・・バレたのかもね」
「そ、そんな!嫌よ!私は、私は・・・!」
「泣かないでマユ。なんとかするから」
「ええ。私も説得するわ」
「ありがとう」
 リリィの顔に笑顔が戻った。
 でも、どことなく寂しそうなのは気のせいかな。

「デル兄さん、こんなに広い家どうやって買ったの?」
「誕生日プレゼントで貰った」
「え!?凄いなあ」
 秀才で男版ルカさんとまで言われる従兄妹のデル兄さん。そりゃあこんな家、あげたくなるよね。
「しっかし生徒会かあ。俺断り続けてきたが、リア充と依存症2人組が心配ってルカ先輩に言われたら断れねえよなあ」
「うん。そだね。」
 あれからネルと仲直りした。けれど、私はここで暮らすことに。
「ねえどうしてここで暮らさなくちゃいけないの?」
「そりゃあな、友達といつまでもベタベタするなって言いたいのさ」
 どういうことか分からない私にあの学園のパンフレットが渡された。
「就職率が低い、留年しやすい、校則がゆるい・・・そのおかげで外部入学の定員に届かなくて毎年定員割れしているらしいぜ」
「それじゃあミクは合格して当たり前だったって言うの?」
「まあな。んで、大学部に行かず就職が出来なかったTさんの例をあげて説明しよう。あの留年男から聞いた話だ」
「ふうん。そう」
「Tさんはリンの少し前のような状態だった。しかし留年男の熱い指導によりルカさん状態で卒業した。資格もいくつかとっていたらしいから高卒でも採用されるだろうとあちこちに履歴書送ったらしい。結果、Tさんはメイコ先生の家に居候している」
「・・・失敗したのね」
「ああ。友達に甘えて失敗した例だ。そんなTさんもバンドデビューするらしいな」
「少し不安定な職業か~」
「お前がそうなるかもしれない、と母さんがいらん心配してな」
「心配してくれてありがとう」
 私はオムライスを作ることにした。

 翌日。私が恒例のネル起こしに行こうとするとユキちゃんが男の子と手をつないで歩いていた。
「ユキちゃん、おはよ~」
「あ、おはようございます。こっちはリュウトくん。ユキのゆるされないかれしなの」
「ああ、この子の言うことはむししていいですよ」
「あ、うん・・・」
 どうやらユキちゃんはメルヘンな世界に浸っているようだ。
「よー!ミークー!」
「うわっ!?ネル?起きれたの!?」
「うん♪最近頑張っているんだ!」
「おはようございます」
「あら、おはよう。初等部の子かー。かわいいっ!」
「あはは。じゃあユキたちもういきますね」
「ん、じゃあね」
 するとデルさんと一緒に歩いてくるハクの姿が見えた。
「おはよう、ハク!」
「おはよう。そういえば今日定例会だって」
「えーまあたあのリア充に会うの?」
 定例会はリア充の先輩が終始いちゃつき、それを見てマユとリリィがレンくんに私たちもああいうカップルになりたいね、と言うお決まりのパターンで何がしたいのやらと私たちは思う。
「今回はクリスマス会について話し合うんだって」
「へえ。この間私達に決まったばかりなのに」
 そう。定例会はまだ2度しか開かれていない。しかしもううんざりしてきた。
「遅刻するぞ?ほら行くぞ」
「あ、待ってえ!」
 デルさん、足早い!

「先生なんて大きらい!ユキ、もうしらない!」
 休み時間。わたしはユキおねえちゃんに会おうとやってきた。でもなんでせんせーに大声だしてるのかなー?
「ああ、アイさん!ユキさんをどうにかしてください!」
「んー?」
「またなにしてるの」
 リツくんまできた。リュウトおにいちゃんはこまっている。
「ああ、もうやめろよ・・・」
「えい!」
「あっ」
 ユキおねえちゃんがせんせーにあのリコーダーを。せんせーがバッタリしちゃった。
「え、せんせー?」
「ユ、ユキ」
「ユキおねえさん・・・」
 ユキおねえちゃんはリコーダーをおいてどこかへ。
「せんせー?」
 つついてもだめ。

 何か大きな音がした。私はカイトとついでに力自慢のがくぽを呼び、初等部の1Fへ。
「うおっ」
 途中でユキちゃんにぶつかった。泣いて・・・いるのかな。
「どうしたの?ユキちゃん」
「あ、あのね、ユキ、先生をリコーダーで・・・」
「めーちゃん、現場に行ってみようよ」
「キヨテル殿が多分倒れていると思うでござる」
「そうね・・・。ほら、泣かないで。一緒に教室に戻りましょう?ね?」
「うん・・・」
 教室に行くとリツくん、アイちゃん、リュウトくんがキヨ先の周りに集まっていた。
「これは、気絶しているだけでござるな」
「ねえがくぽ。小学生の力でこんなことできるの?」
「火事場のバカ力、でござる」
リュウトくん。何があったの?」
 カイトが尋ねるとリュウトくんは、3時間目のことを話出した。
リュウトの証言~
 先生がいつもどおり教えてると、ユキがいきなり『つまんない!ユキ、おひめさまなのにどうしてこんなことしなくちゃならないの!?』って。先生はもちろん止めようとしたけど、リコーダーを取り出して先生がふるえだして。
 しばらくして口ケンカがおさまりそうになってアイちゃんがやってきたんだ。その後ろからリツくんまで。そしてリコーダーで先生を・・・
「なるほどね。おーい先生ー起きろー」
「めーちゃん、僕が保健室に運ぶよ」
「いや待て。微量だが出血しているでござる」
「え!?ユキちゃん・・・」
「ご、ごめんなさいごめんなさい!」
 私は携帯で救急車を呼んだ。こんな大事になるなんて・・・ね。

「ピコとー」
「ミキのー」
「司会でお送りする定例会!」
 いつもの定例会が始まった。ダンくんなんかもう寝ている。
「ミキちゃん、いや会長、今回も上手だったよ♡」
「きゃっ♡ピコくん、いや副会長こそ♡」
「いいからさっさとクリスマス会について決めようぜ」
「ダンくんってば冷たーい」
「ふん。で?何する予定なんだ?」
「んとね、モミの木の飾り付け、それとパーティ会場の準備、いつものところからコックを呼んだり色々あるよー。ほとんど書記に任せるよ~」
「え!?あのモミの木ですか!?」
 ガタタッとマユとリリィが立ち上がる。何?
「ミク、知らないの?通称・恋人が実るモミの木って」
「・・・私やネルはそういうのに無縁だけど、聞いたことぐらいなら」
「へえ」
「レンくんをこの手におさめたい!」
「私も!」
「ミキちゃんに告白したのもモミの木の下でなんだ。中等部1年生の時の話だけどね」
「きゃっ♡恥ずかしいよ、ピコくん♡」
 そんなこと暴露されても、こっちが困る。メルちゃんは呆れているようで、携帯をいじっている。
「もう4年ですか!長続きする秘訣は!?」
「一緒にいることかな♡」
「ピコくん大好き♡ってよく言ってるよ」
「ミキちゃん♡」
「ピコくん♡」
 ダンくんが立ち上がる。
「それで?書記は何すればいいんだ?」
「あ、ええとねーメルちゃん、ミクちゃん、ネルちゃん、ハクちゃんはパーティ会場の飾り付け、ダンくんやレンくんはモミの木の飾り付け、マユちゃんとリリィちゃんは補佐ね。デルさんはーコックの手配を校長先生として。ナオくんや私たちは出し物をメイコ先生と相談するから。以上」
 またこの微妙な解散の仕方。
「あれ?救急車?」
 窓の外を見ていたナオ先輩が唐突に声をあげる。
「ピコくん、何があったのかなあ」
「ミキちゃん、大丈夫だよ」
「あのスーツ・・・運ばれていくのキヨ先じゃん!」
「あの初等部の?どうしたんだろー」
 ユキちゃんと仲が悪そうだったけど・・・まさか・・・。

リュウトくんはユキのこと、好き?」
「うっ」
「じゃあクリスマス会の時きくよー」
 楽しみにしてるよ、リュウトくん。