神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

美しき悪魔 第四話「全面対決」

 マーチュリアルらしき人はニヤリと笑った。
「確かにわらわは殺人鬼じゃった。じゃがのう、わらわは妹が亡くなってから初めて命の大切さを知ったのじゃ」
『「だから?」』
「わらわは妹と同じく床にふせっている少女につくことを決め、悪魔をやめたのじゃ。わらわがピュアで純粋になった今、対等に戦えるかのう?」
『みちる、レイラの元に戻るわよ』
「ええ」
 2人を見送り、マーチュリアルはにこりと微笑んだ。
 改めて見ると彼女は銀色の髪に金色の目と豪華。ただ、身長はとても低い。
「助けてくれたの?」
「ああ、まあな。わらわがここに来たのも人助けのためじゃからのう」
「みちるってどう?」
「あの小娘か?簡単じゃ、悪魔になるぞ。わらわを超える悪魔に。くくく、全く困ったものじゃ」
 すると隠れてたのかルマが飛び出してきた。
『マーチュリアル!?え!?ぶ、武装してない!?』
「おう、ルナか?それともルマか?」
『ルマよ。心入れ換えたのね』
「くくく、当たり前じゃ。早くあの悪魔姉妹を殺さないと危ないのう」
『ところでその口調は?私と同じだったのにおかしいわ』
「麻智子の見てたテレビとやらから影響を受けたのじゃ。中々面白いぞ?」
『・・・・・・とにかく、マーチュリアルが味方なのは助かるわ。じゃ、作戦練るわよ』
「うん」
「了解じゃ!」
 4階で麻智子は倒れていた。マーチュリアルが覚醒して、抜け出したんだろう。
「麻智子~!起きて~」
「ん・・・わ、佳梨!?久しぶり」
 ニコニコ笑う彼女には現状が理解できていないようだ。
「ずいぶんと派手にやっておるのう。ま、全盛期のわらわには到底敵わんがな。くくく」
「マーチュリアル、ごめんね。始めからルナたちと一緒の扱いすればよかった。命の恩人なのに扱い方、雑でごめんね」
「まあ気にせんでよい。わらわはドゥを捜したい」
『ドゥなら今日もぴったり会長についてるわ』
「今はお別れ会会場にいると思うけど」
「でもどうしてドゥを?」
「あやつはのう、ああ見えてもセイラたちのスパイなのじゃ。昔からわらわを毛嫌いし、目の敵にしセイラたちにわらわがした怪しいことを全部報告しておった。もうずいぶんと昔の話じゃが。しかし、会長とやらについているのならまずいのう。あやつは人の性格まで歪め、自分に近づけることができる」
「え・・・」
「ちょ、それ会長が危ないってこと!?」
『でも、会長は生まれた時から悪魔と一緒だったって言ってたわね』
「出遅れじゃった。要するにげいむおうばあじゃ」
「ゲームオーバーね」
 マーチュリアルの冗談がすごい面白い。なんだ、いい人。

「佳梨~!お見舞いに行こうよ」
「あ、うん」
 あのあと会長にはメール、電話、LINEをしたが反応がなかった。もう本当にダメなのかもしれない。
「あら、今日も春樹くんのお見舞い?これ、春樹くんが好きなスイーツセットよ。持っていきなさい」
「うん!じゃ行ってくるね」
 春樹の驚く顔が楽しみ。同時に叫ぶかもしれない。
「春樹♪」
「えええええ!?ま、麻智子!?」
「わらわと」
『私と』
『あたしも』
「私もー」
「なんか、多くねえか?」
「くくく、わらわはマーチュリアルじゃ。元殺人鬼じゃ」
「は!?」
「春樹くん、大丈夫だよ。マーチュリアルはもう悪魔でも敵でもないんだから」
「くくく、麻智子の感情は今のわらわでもわかるぞ。言ってみるぞ」
「あう、それは言わないでっていつも言ってるじゃん」
「くくく、冗談じゃよ、言わん」
「もう!」
 春樹はすっかり笑顔になった。だが、足はまだ治らないらしい。
「クリスマスまでには治るぜ」
「1ヵ月?ヒドいんだね」
「くくく、わらわは殺人を止めてくる」
「補導されないようにね」
「大丈夫じゃ、元の姿に戻るから」
 マーチュリアルはそう言うと、なんと突然美少女になった。
「わらわは元々こういう姿じゃったがのう、狙われるからまやかしの魔法で色々化けておったのじゃ」
「何とか止めてね」
「・・・確証はできんがの」
 マーチュリアルは寂しそうだった。

<次のニュースです。 朱見市立第一中学校にて起きている連続殺人事件に関与しているとして木山みちる(14)を異例の指名手配にしました。木山容疑者は未だに逃走を続けており、被害者が増えることは懸念されています。ちなみに現在の犠牲者は80人です>
「・・・」
 夕食時、重苦しい空気になった。麻智子が見つかり、麻智子の両親も誘って5人での夕食。なのに、このニュースが流れてしまって台無しだ。
「木山さんって・・・確か佳梨那に怪我を負わせて謝りもしなかった子よね?」
「あら、そうなんですか?」
「ええ。ご両親は後から謝りにきて大金を置いていきましたけど。でも軽くしか謝ってくれなくて」
「お金持ちなの?」
 麻智子がすっとんきょんな声を出す。相変わらずな性格だ。
「うん、そうみたい。あら、何かしら」
 ニュースはまだ続いていた。
<なお、今日行われたお別れ会後、木山容疑者が数人と一緒に校舎を徘徊し、壊し回っていたとの情報があります。警察はしばらく校舎を封鎖する方針です>
「あうー、これじゃ学校に行けないね」
「本当ねえ」
 夕食ぐらい、賑やかに過ごしたいものだ。

「ううむ、ここか」
 わらわの名はマーチュリアル。天才美少女じや。
「ずいぶんと派手にやりおって・・・。この学校は廃校確定じゃな」
 わらわがぶっ壊した学校は3年程たつと元に戻ったらしい。しかし、わらわはこの学校のように窓を割ったり血だらけにはしていない。
「あんた、マーチュリアル?」
「悪魔に命を売った小娘か。けっ、対決するか?」
「・・・セイラに訊かなきゃわからない。でも邪魔しないで」
「くくく、無駄じゃよ」
 すっかり血に染まった金属バットを片手にゆらゆらと歩くその姿はもう半分以上が悪魔じゃろう。体も人の血だらけじゃ。
『ふふっ、対決しに来たってわけ?』
「そうじゃ。なんじゃ、派手にやるか?」
『ええ、もちろん!』
 全面対決じゃ!