女戦士と猫 第一話「きっと頼れる仲間たちとの出会い」
私は、両親を失った。大災害が村を襲ったのだ。私だけ、生き残った。それは、とても虚しくて、悲しいことだった。
「なあ、君」
「……なあに? 」
振り向くと猫がいるだけ。なんだ、幻聴か。
しかし、その幻聴はさらに続いた。
「レコンワールドを救ってほしい」
「……」
「僕の名前は、ルゥ。この世界じゃ猫だけど、実は戦士なんだ」
「うるさい」
猫に石を投げつける。猫は前足で石をはらう。
今はほうっておいて欲しい……。
「だから僕は猫じゃないって戦士なんだ」
「騙さないで。私の村はもうないの。私は死ぬべきなの」
「ふうん。レコンワールドになら君の村を滅ぼした奴ぐらいいると思うんだけど」
私はなるほど、と思った。私の復讐も成立するのか。それならば、信じられる。
「いいわね。そういえばなんで声をかけてきたの? 」
「なんでって、君の胸が」
一瞬信じたのがバカだった。
もう一度石を投げたが、また避けられた。猫は少し落ち込んでいる。
「行けばいいんでしょ? あ、私はフィーナ」
「よろしく」
どうやってその異世界に行くのかと見ていたら、川に飛び込んだ。
猫なのに、川に飛び込むとは凄い勇気がある。
「べばぶら」
「溺れてるし」
仕方ない、と思い私も飛び込んだ。
目を開けると、眩い世界に来ていた。しかし、活力がない。
まるで私の滅びた村のように、活力がない。
「闇を支配する者が滅茶苦茶にしてね。それで戦士を急募してるんだ。胸のでかい」
猫から人になったルゥを殴る。軽くしたつもりだが、手加減し忘れた。
「やめて! 痛い! 」
「あのね、変態発言慎んでくれないかな? 」
「え~……あ、はい、スミマセン」
ルゥと改めて握手する。──それは、とても暖かな大きい手だった。
街の案内もせず、この変態戦士は私を小屋に連れていった。
そこにはエメラルド色の髪の女性と、にやけている茶髪の男性がいた。
「おっ、合格」
「アラン、死にたい? 」
「やめて! 」
どうやら変態さんはまだいるらしい。
女性は私に向き直り挨拶を続けた。
「ごめんなさい、びっくりしたでしょう? 私はカナ。こっちはアラン。私たちとそこの元祖変態ルゥは同じ孤児院出身よ」
「変態をなめないで──ごふっ」
「胸の大きさで決めるバカだけど、戦いは一流だから。ほら、あなたも戦士として剣を持ってみて」
「あ、はい」
近くにあった軽そうな剣を持つ。村では木の剣だったから、少し慣れない。
「それはシリウスね。女性用よ」
「ちなみに女性じゃないカ──ごふっ」
「全く、そんなに死にたいのね」
「……スミマセン」
カナさんが変態コンビを殴る。それに、クスッとつい笑った。
変態コンビが顔を輝かせる。
「あ、やっと顔が可愛くなった!カナよりも──ごふっ」
さっきから何度も殴られる2人。わざとかな。
「あ、それじゃ詳しいお話をするわね。ほんのすこし前のこと。闇を支配する者とかいう、まあいわゆる魔王みたいなのがやってきて街を滅茶苦茶にしたの。住人の多くは奴隷になったけれど、地下にいた私たちとかは無事なの」
カナさんはただ、と俯き、続ける。
「多くは一般の民で戦士なんてルゥ以外はいなかった。剣士は私の他にもいるし、そこのアランのような魔法使いはいっぱいいたわ」
「つまり」
「そう、対等に戦えない。だからスカウトしてたの」
回復した変態たちが私の近くで屈んで何かしている。何だろう。
「パンツはピンク、サイズは上から9─ごふうっ! 」
私はシリウスの柄で殴る。人の体観察するな!
カナさんもすかさず変態コンビを殴る。
「リーダーが普通説明するところよ! 」
「ごめんなさい」
「あの、このへじゃなくてルゥさんがリーダーなんですか? 」
「あ、まあね」
この変態がリーダー……。本当に大丈夫なのか、不安でたまらない。