ベリー☆ハート 第一話「新しいお友達」
「千穂、いつまで見てるの? 」
「あっ、ごめん」
私こと、名取千穂は夢見る乙女。親友の種草灯に毎度怒られながらも、大好きなサッカー部の川島くんを教室からこっそり見つめている。
「本当に好きだよねえ。もう何年だっけ? 」
「やめてよ、もう」
私たちが中学2年生の頃、転校してきた川島くんに私は一目惚れした。灯はサバサバした性格で既に彼氏がいた。そこで惚れちゃった、と言ったら軽くあしらわれた思い出がある。
──軽く4年である。もう高校2年生。ずっと見つめることしかできなかった。
「でも今年はチャンスでしょ! 同じクラスなんだからさ! 」
「うん、でもね……」
「早く告白しちゃいなよ。私みたいに彼氏早くつくんないとおもしろくないよ~」
「うう」
高校近くの駅で灯と別れ、私は駅に入る。私は電車通学、灯はバス通学なのだ。(同じにしたかったが、私の家はバス停からかなりの距離がある。)駅も離れているが、ここは駅ビルがあるから暇つぶしに最高だ。
「あら、名取さんじゃない」
「あっ、えと、金澤さん」
「ふふ。緊張しなくてもよいのよ? よければお茶でもどうかしら」
「あ、ありがとうございます」
病気で1年留年したという金澤萌華さん。その何だかやけに可愛らしい名前とは裏腹に、とてつもなく美人。年上ということもあり、私はどうしても緊張してしまう。
駅ビルの中のお洒落なカフェに入る。私と灯ならすぐにファストフードのお店に入る。やはり、年上のお姉さまは違う。
「そういえば金澤さん、大分顔色戻りましたね」
「ええ。父も大喜びしてくれたわ。明日、父と二人でお寿司を食べにいくのよ。それも、回らないお寿司」
「わあ、すごいです」
「母も忙しい時間の隙間を見つけて戻ってくるそうだから、とても楽しみなの」
「それは楽しみですね」
「さあ、何か頼みましょう」
今の金澤さんはとても幸せそう。昨年、ちらりと見かけた時はお薬のせいか少しやせていた。せめて1年だけは、と懇願して通っていたらしい。(灯から聞いた話だけど)
しばらくして、レモンティーとミルクティーが運ばれてきた。もちろん、ミルクティーが私の。
少し飲んでみると、ほどよい甘さが美味しい。そうとう高いんだろうなあ。
「私にも色々あったけど、やっと治ったからすごくうれしいの。お友達も新しく作りたいなあって」
「そういえば昨年のお友達とか……」
「会っても妬まれるだけよ。受験生だから余計ピリピリしているでしょうし。会うのは合格してからで構わないわ」
「大人ですね……」
「ふふ。私、あなたとお友達になりたいの」
「えっ」
「他の子も見てみたけど、私にはあわないのよ。それに比べて、あなたと灯さんは話しやすそうだから」
「私でよければ……」
「うれしいわ! 」
金澤さんのはしゃぎようはすごかった。そういえば回らないお寿司にも行こうと思えばいけるぐらいお金持ちだった。やはり、お友達とは貴重なものなんだろう。
「明後日、日曜日よね。どこかで遊びましょう」
「灯にも言っておきます」
「楽しみだわ。私、セイシュンしてみたかったの」
「おお……」
「紅茶、飲み終わったみたいね。そろそろ出ましょう」
「はい」
金澤さんは迎えを待つとのことで、私は一人電車に乗った。
途中、灯にメッセージを送る。
『日曜日に出かけない? 』
『いいよ。どしたの? 』
『金澤さんと友達になったの』
『(・・)(。。)……ってすご! 』
『(・∀・)えへへ』
『だから3人で、金澤さんが行ったことのないとこに行こうかなって』
『あー、それなら金澤不動産の絡まない場所……桜通りなんかどうかな』
『いいね! じゃあ、そうしよう! 』
『日曜日にね』
日曜日が楽しみだ!