神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

ワガママ・プリンセス 第三話「舞踏会(上)」

 今日は舞踏会。頼んでいたドレスはガートリが持ってきてくれた。ヒメアの前で試しに着てみる。
 そこに、お母様が現れる。あら、どうしたのかしら。

「そんな派手で、しかも露出の激しい服をよく着れるわね」

 お母様の目は冷たい。そんなお母様はきっちりとしたお洋服。またしても参加しない気らしい。付き合いが悪いと他国の王様達に噂されかねないのだけれど、いいのかしら。

「王妃様、その言い方はよくないと思いますが」
「ヒメア、私はそんな服気にくわないわ。今日も参加しないから」
「挨拶ぐらいしてください! 他国の方々も疑ってますよ!? 」

 ヒメアの剣幕に驚くようなお母様ではなかった。お母様は、ヒメアをキッ、と睨みつけると部屋を出て行った。

「ねえ、ヒメア。お母様はなぜそこまで嫌うのかしら」
「……王女様の母方の祖母にあたる方が踊り子だったのですよ。反抗心でしょう」
「変わってるわね」
「しかも彼女はまともに王妃様の育児をなさらず、王族たちのご機嫌取りばかり。反抗したくなるのは分かるけど、引きずりすぎかと私は思います」

 ヒメアはにこりと微笑み、まあ気にすることではありません、と言って出て行った。
 私は外の世界にいた頃のお母様とお父様をあまり知らない。少しでもいいから、知りたいなあ。

 着替えたあと、ガートリに言って調査をしてもらうことにした。グラッサ、メルトリが来る前にお母様を引きずりださないと!

────

 王女様も人使いが荒い。カスティッチオのことを細かく知る人など、そういるのだろうか。うむむ。

「そこのメイド」
「あ、はい? 」
「カスティッチオのことについて聞きたいのだが。特にこの国の王妃様の関連のことを」
「噂話ですけど、王妃様のお父様は豪遊の果てに亡くなったらしいですよ。天才数学者らしくない最後ですよねえ」
「……そうか」

 王妃があそこまで堅苦しいのはそのせいかもしれない。そのあとも噂好きな貴族などに話を聞き、まとめた。
 誰もいない書庫のテーブルでそれを読む。

「……天才数学者と王宮の踊り子は結婚する気などなく付き合い始めた。数ヶ月後、踊り子は体調を崩し、辞めたあと5ヶ月くらいして子供を産んだ。無理をして貴族達の前で踊り続け、挙げ句の果てに蒸発」
「そして、娘の結婚式で自殺したのよ」

 ヒメアさんが横にいた。明らかに、怒っている。

「王女様には伝えるべきではありません。彼女の精神はまだ幼いのですから、傷はつけないでください、ガートリ」
「──はい」

 この事実を伝えれば、怖がる顔が見れるだろう。しかし、ヒメアさんが止めるのならば……やめておこう。