神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

VOCALOID学園 第21話 ハッピー☆サマーバケーション~そうだ、ハワイに行こう!~

「ねえ、お父様。レンくんを連れていってもよろしいかしら?」
「はっはっはっ!構わないよ。マユが好きな人なら尚更だ。もし付き合いだして結婚も考え出したらあちらの家族ともハワイへ行こうではないか」
「それ素敵ね!」
 夏休み。私たちの家族は毎年恒例のハワイの別荘へ行くことに。
「今年はレンくんとのデート中心に計画たてなくちゃ!」
 本当はリリィを連れていく予定だったのだけれど、あちらもあちらで軽井沢へ行くとのことで今年はダメと言ってきた。まあ、私の家も軽井沢に別荘を持っているけれど、毎年8月にはハワイに行くことになっている。理由としてはあちらに祖父のお墓があるので、ということなのだが。
「ねえお父様。14日以外で昼間デートしちゃいけない日ってある?」
「うーんそうだなあ。よし、じゃあ14日の滞在期間中9日間だけデートしてよい」
「きゃ、嬉しいわっ!ありがとう、お父様」
 ああ、ワクワクしちゃう!

「レン、電話」
「ん、ああ。って子機投げるな!」
「じゃ、ラブラブにどうぞ」
 夏休み、珍しく家にいるリンは前みたいに背伸びしすぎた派手な化粧とファッションをしていない。大概家ではなく友人の家に泊まっていたりする。
「もしもし」
『もしもし、レンくん。あの、そのっ・・・夜遅くにごめんね』
「ん、ああ・・・」
 確かに厳しい環境で育ったお嬢様としては10時というのは既に夜遅くなのかもしれない。
「別に大丈夫だよ。まだ風呂にも入ってねえし」
『ふふっ、良かった』
 電話の向こうでマユは喜んでいた。反応が、その、可愛いな。
「で?何の用だ?いつもだったら玄関ぶち破って会いに来るっていうのに」
『ううん、レンくん。直接伝えたらリンちゃんが過剰反応しちゃう内容だからいつもの様に行けないの』
「は?」
『ハワイに2週間滞在するの。でね、お父様に9日間の自由をもらったから、その・・・レ、レンくんとデートがしたいなあって思って』
「!?」
 ハワイ・・・確かに、まともに戻ったリンならば友人やら先輩やら引き連れて俺についてこようとするな。ん?デート?
「デ、デート!?」
『あ、嫌なら断ってもいいのよ。まあ今決めてほしいけれど』
「・・・行くよ」
 なぜか俺は即答してしまった。なぜだろう、前の俺なら断ってたのに・・・。
『ちなみに私の家の別荘はいくつか部屋が余ってるから、私の部屋の隣を確保しておくね』
「ああ・・・」
 別荘にもびっくりさせられるが・・・。
『それじゃあ7日にね』
「ああ、じゃあな」
 意外とすぐだなあと感じた。

「吉田くん、私たちもハワイに行くわよ」
「ええええええ!?ちょ、リリィお嬢様さすがにそれは・・・」
「だって、気になるんだもの!私が、大親友のこの私が断ったら『そっか、じゃあ別の人に訊いてみるよ』なのよ!反応おかしくない!?」
「ま、まあそりゃあごもっとですが・・・」
「お父様の親戚や会社仲間?知らないわ。7日からはハワイよ、ハワイ!」
「ああ、僕の解雇決定ですね」
「まあ学園にも雇われているのだしいいじゃない」
「そ、そりゃまあそうですが、あの」
「何?」
「島根はどうでょうか」
「却下」
 軽井沢にはお父様の会社の人、あと親戚一同が集結するというマユの家より豪華さは劣る。
「さあってとマユはどんな顔するかなあ」
 ふといつものレンくん24時間監視システムを立ち上げる。お風呂あがりのリンちゃんが部屋に入ってきたところのようだ。
『レーン?なあにニヤけてるの?お風呂、あいたよ』
『あ、ああ』
『何々?さっきの。デートのお誘い!?』
『ま、まあそんなもんだよ』
『へえ。マユちゃんとかあ。いいなあ。そりゃ妹として邪魔できないねえ。あとで散々からかってやるからいい土産買ってきてね』
『ヒドいな、それ。それになぜお前はタオルを体に巻き付けた状態で現れるんだ!?』
『ごっめーん!家なんて久々で』
『ったく・・・。じゃあ風呂はいる』
『お土産よろしくー!うぇーい!』
『分かってるから部屋行けよ!』
 私はスイッチを勢いよく切った。マユ、何てことをしてるの?この時期にデートってハワイしか・・・。
 お父様に怒られてもいいから、マユを殺したい。

 7日になった。私はフリルのついた水玉のワンピースをチョイスしてきた。夏らしく涼しさを重視して露出は多め。頭には女優帽。
「よ、マユ」
「レンくん!」
「か、可愛いな」
 早速誉めてもらえた。嬉しい。キュンってなっちゃう。
「君がレンくんだね。おい、使用人。荷物を運んでやりなさい」
「ああ、すみません。ありがとうございます」
「いやいやいいんだよ。はっはっはっ」
「今日はこの時間に飛行機貸しきって行くから心配しなくていいのよ」
「え?」
「ふふっ、心配そうな顔してたじゃない、レンくん」
「そ、そうか?」
 レンくんの場合、私たちの当たり前はきっと通用しないんだろうなあ。それが気掛かり。
「じゃあ行こうか」
 レンくんに庶民の生活を聞いてみる。
「ねえレンくん。学食の値段って気にするの?」
「当たり前だよ。リンと俺合わせて月6万。リンが結構使うからさ、俺結構安いのしか食べられないんだよなあ」
「へえ。やはり、違うのね」
「マユは無制限かあ。いいなあ」
「うふふ。スペシャルネギトロ丼、おすすめよ」
「えっ、それ1000円以上するだろ」
「今度食べさせてあげる」
「お、楽しみ」
 そのあとも雑談をしたりしていたが、眠くなってきた。
「ふわあ・・・」
「あ。眠いなら寝たら?まだだろうし」
「ん、そうね。着いたら起こして」
「わかった」
 レンくん、素敵。

 スースー寝ているマユの寝顔は可愛い。
 リンには旅行のついでって感じと説明した。土産を期待されているので、あとでマユに聞こう。