神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

VOCALOID学園 第16話「トラブル転入生」

「レンくん!今年も一緒だねっ」
「あ、うん」
「・・・レン?二股しないでね」
「リン、そんなことしねえよ」
「ふふっ、冗談だって」
 私はいい気分じゃなかった。マユに対するレンくんの反応がどんどん変わっていく。マユのことを好きになってる。やだっ・・・。
 私は何とか明るくしようとして話をする。
「リンちゃんはB組になったんだっけ?」
「ん、まあね~」
「凄いね。いつかレンくんと一緒のクラスになれるかもよ」
「んーそうなったら嬉しいけど」
「そろそろ戻れよ、リン」
「はあい。じゃね」
 私はいつかリンに・・・打ちあけたい。
 あのことを。

「転入生よ☆」
 またメイコ先生のクラス。メイコ先生はカイト先生と付き合い出してすっかりおしゃれに磨きがかかっていた。
「双子みたいだけど、まあよろしく」
「双子の姉の鳥音です。よろしくお願いします」
「妹の杏音です。お姉ちゃん大好き~」
「こら、杏音!もう転校したくないでしょ!」
「うーいいじゃん」
「ま、早く席について」
 休み時間になり、早速ネルが話しかけに行った。
「やっほー!よろしくねっ」
「あ、はい。さっきは杏音が迷惑を・・・」
「そういえば転校ってどういうこと?」
 ハクがなにげなく聞くとはあ、とため息をついた。
「杏音が私にべったりで・・・。しかもダンスの時以外はのんびりしてて気味悪いとか言われて。今まで学校があわなくて中学生の間は5回転校しました」
「た、大変だね」
 鳥音はネルと同じサイドテール。それに気づいたのか、笑顔になった。
「同じ髪型ですね」
「あ、本当だ」
「お姉ちゃん~~!!!!」
「きゃっ」
 杏音が鳥音に抱きつく。周りの子は冷めた目で見ている。
「ね、今日さあ」
「いい加減離れたらどうなの!?そこのシスコン先輩!」
「!?」
 いつの間にか入り口にリンちゃんが。すっかり普通の姿。
「シスコン先輩を甘やかさないでくださいね、ミク先輩」
「あ、はい・・・」
「カイトから聞いてたので、シスコン先輩のこと」
「そうなんだ」
 当の杏音は中等部の子に怒鳴られたもののぼうっとしている。さすが天然。
「あたしも協力します、鳥音先輩♪」
「ありがとう」
「ほえ?」
 杏音が首をかしげた。

「ねえ、リリィ。今日はあまり一緒にいなかったけどどうしたの?」
「・・・なあんか気分悪くて。大丈夫だから心配しないで」
 放課後。2-Bの隣の教室からそんな声が聞こえてきた。
「で、リン。私たちに協力してほしいことって?」
 いろは、グミ、ラピスとあたし。既にとても仲良しになっていた。
「ミク先輩たちのクラスにシスコンな子が転入してきて。その子をどうにかして双子の姉から離そうって思ってさ」
「あ、いわゆるレンくんにマユちゃんがくっついてる状態かにゃ?」
「んーそれの女版となると気味悪いね」
「うん、確かに」
「なるべく先輩たちにもそのシスコンである杏音先輩は放置ってこと伝えておいたから」
「うーんなるほどにゃあ」
 すると鳥音先輩が走ってきた。ミク先輩たちもいる。
「ほ、本当にいいの?」
「うん!ここは初等部から高等部は行き来自由なんだから」
「そうだよ」
「あ、リンちゃんたち!やっほおー!」
「初めましてにゃー。猫村いろはにゃー」
「ね、猫っ!?」
 鳥音先輩はびっくりしている。そりゃそうだ。
「こっちがグミ、その隣がラピスにゃ」
「よろしくです」
「よろしくなのです~」
「うん、よろしく」
 にぱあっと笑う鳥音先輩。あの妹さえいなければレン並みにモテてたかもしれない。
「おおー皆懐かしいねー」
 なぜかテイ先輩までやってきた。
「なんで来たのですか~?」
「んー。まだお仕事はぼちぼちだから。暇だし来たってわけ」
「もうナイフは持ってないかにゃ?」
「ナ、ナイフ!?」
「あれ、このネルに似た子は?」
「転入生ですよ」
「は、初めまして。鳥音です」
「ほほう、そうなのかー」
 あたしは少し気になり、ティ先輩に訊くことにした。
「レンは諦めましたか?」
「ん、もちろん。そこまで子供じゃないし。別の人見つけてつきまとえばいい話だもん」
「・・・」
 この先輩・・・頭がもうダメかもしれない。
「どうやって杏音先輩を置いてきたのですか?」
「あの子、運動神経だけは私に勝てないから私が走ればすぐ見失うの」
「うわ・・・それであの激走を」
 やっと出ていったがくぽ先輩やカイト、メイコ先生の時代なんか校内をバイクが走り回っていたと言うぐらいここは規則が緩い。
 走っても、ああ陸上かどこかが練習してるのかー、という目でしか見られない。スカウトする先生もいる。
「ここには廊下走るな、というポスターがなかったから走ったんだけどいいんだよね?」
「いいですよ~」
「構わないにゃ」
「お姉ちゃん~!」
 その時廊下からのんびりした声が聞こえてきた。すかさずいろはがいつも持ち歩いているキティちゃんタオルケットを鳥音先輩に被せる。
「ううーお姉ちゃん知らない?」
「知らないです~」
「そ、そう」
 がっくりして杏音先輩は帰っていった。
「どうしてあんなに気持ち悪い程まとわりついてるの?」
「昔からなんです。私がよく学級委員してて頼れるお姉ちゃんというイメージから・・・」
「ふうん」
「そうにゃのか」
「とりあえず寮に杏音は押しつけました。母がうるさいもので・・・」
「そりゃそうでしょうね」
「とりあえず今日は解散するにゃー」
「そうね」
 あたしたちは笑顔で先輩を見送った。

「いや~大変な1日だったねえ」
「本当本当。ハク、大丈夫?」
「うん・・・」
 寮生であるハク、ネルと別れ鳥音と一緒に歩き出す。
「ミクさんは家、近い?」
「うん。本当は寮に住みたかったけど高いからね」
「あはは、そうですよね。ここ学費だけでもそうとうな額だと言うのに」
「私のお母さん、毎月変な顔してるよ。学費、高いんだね」
「うん。あ、友達になってくれて本当にありがとう」
「ううんこっちこそ」
「じゃ、また明日」
 私は1人になった。本当は寮に入らないとキツい距離だが、我慢している。これ以上の負担は重い。
「あ、ミクちゃん!ね、お姉ちゃんは?」
「うわっ!ど、どうしてここに?」
「えーだって、お姉ちゃんと過ごしたいんだから仕方ないじゃん」
 私が対応に困り、おろおろしていると後ろから誰かがやってきた。
「寮から逃げ出した子猫ちゃんはあなた?」
「ルカさん!?」
「お久しぶり、ミクちゃん。荷物とりにきたら寮のおばさんに『時間を過ぎて逃げた子がいるから捕まえに行ってくれ』って頼まれちゃって」
「そうだったんですか」
 にしてもスカート(膝上)、ブーツで走ってくるとは・・・恐ろしい人。ちらりと杏音を見ると、逃げ出そうとしている。
「私、50mは8秒台よ?勝てるかしら?転入生さん」
「えっ」
 それには私も驚く。ルカ先輩、美人なのに凄い!
「ほら、帰りましょうね」
「えー」
 とりあえず一件落着・・・かな?

 翌日から、杏音のシスコンは少しずつ収まっていった。鳥音もほっとしている。