神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

美しき悪魔 第五話「崩壊」

 わらわは自分が強い、ということを自覚しておった。じゃが、セイラはそれ以上じゃった。
『きゃはははは!どうしたのぉ?なまっちゃったかなあ?』
 しかもみちるという小娘も遂に悪魔になった。これはマズイ。
 わらわは35回以上戦っているが今回は・・・負ける!
「ちょっと、逃げるっていうの!?」
『ひどいわね』
 逃げるが勝ち、じゃ!
 ところが学校から出たなりよくない奴に遭遇してしまった。警察という奴じゃ。
「わ、わああああ!」
「いや、わらわは・・・」
 どうやら犯人の一味と間違えられたようじゃ。仕方ない、説明しよう。
「わらわはただ単にここに荷物を忘れた子に頼まれて荷物をとりにきただけじゃ。じゃが、3人は強くてのう。ダメじゃった」
「3人?犯人たちを見たんですか?」
「ああ。みちる、セイラ、レイラじゃ。じゃが捕まえるためには人間の力じゃ無理じゃよ」
「そ、そうですか。ご協力ありがとうございました!」
「む」
 わらわは初の敗北をしてしまった。不覚じゃ。

「ふわあ・・・」
 私は起き上がり、いつものように髪を結ぶ。今日は久々にサイドテールにする。
「ねえ、ルマ」
『何?』
「マーチュリアルは大丈夫かな」
『・・・さあ?』
「それと、どういう関係なの?学校とか色々言ってたけど」
『・・・今は話せないわ。さ、麻智子の家に行くわよ』
 ルマには何か後ろめたいことでもあるのか、黙って私の中に引っ込んだ。
 麻智子の家はこの辺でも特に静養地として人気なすずらん丘という地区にある。私の家は町の中心部にあるため、かなりの距離になる。自転車でも20分はかかるだろう。
 到着すると、マーチュリアルがポツンと立っていた。
「どうしたの?」
「わらわは敗北したのじゃ。・・・このわらわを35回以上の勝負の後超えたとはとんでもない悪魔じゃのう」
「しょ、勝負!?」
『そんなに勝負したのお?本当にバカだわ』
「うるさい」
 とりあえずインターホンを押すと、麻智子が出てきた。
「わあ、どうしたの?」
「今日お休みだからさ、遊びに・・・というか作戦たてにきたの」
「え、マーチュリアルは!?」
「わらわは死んでおらん」
「よかったあ」
『あたし的にマーチュリアルが負けるとかおかしいと思うんだけど』
「・・・仕方ないことじゃ。わらわは悪魔の力の半分がなくなったのじゃから」
『は!?』
「悪魔が地に降り立つ場合は死神様に力を分けなければならんのじゃ。ほら、普通の人間として過ごしやすくするためじゃ」
「へえ、マーチュリアルってそんなに力を・・・」
「びっくりだね。ルマたちと比べたらどうなる?」
「ルマたちとは比べたらいかん。わらわは死神様にも尊敬されるぐらいのパワーを持っていたのじゃ。くくく」
 麻智子は今更ながらにあ、と言って家に入れてくれた。
「さっき会長の家から電話があったの。やっぱりシズにのっとられたのかな」
「じゃろうな。あやつもよく14年間・・・いや、耐えなければならなかった」
「ふぇ?」
 自分で持ってきたお菓子をさっさとつまむ麻智子。まったく。
『パティシア牢獄。セイラとレイラとシズはそこに捕らえられていた。理由は簡単よ。マーチュリアルを半殺しにしたという・・・ね。あたしがここに来る前騒ぎになってたから知ってる。シズがまさか同一人物とはね』
『ドゥはちゃんとした仲間だけど、大丈夫かしら』
「くくく、まあよいじゃろう。夕方にまたニュースを見ればよい」
「あーあ。段々悪魔たちの過去絡みになってきてちょっとあれだなあ・・・」
「まあいいんじゃない?悪魔たちで解決してくれれば」
 麻智子は本当に天然だ。

<朱見市でまた数人が行方不明になりました。教師1人が遺書を残し自殺をしています>

 崩れる・・・。いわゆる崩壊がルマ姉さんは大嫌いでいつも平和に過ごせるようあたしたちに気を使ってくれた。
 だからあたしたちと一緒に悪魔を殺しちゃったなんて今思えば本当にすごいことだよ。
『ルナ、会議よ』
『あ、うん』
 マーチュリアルは普段更に小さくなって人形になってるらしい。そのおかげか全然不自由そうではなかった。
「わらわはドゥの参加も認めたい。しかし主である春樹という奴が怪我をしていては参加させるわけにはいかん」
 そこでふうっ、とため息をつき続ける。
「セイラたちは狂っておる。長い牢獄生活の末じゃろうが・・・。このままでは生徒の親やあまり危害を加えていない3年生までに被害をくわえることになる」
『でも・・・』
「わらわが追放覚悟で覚醒すればいい話じゃよ」
『それじゃ麻智子はどうなるの!?』
「大丈夫じゃ。契りを交わしていればわらわがいなくなっても生きたい年まで生きれる」
『そう・・・』
 あの牢獄は薄暗いし寒い。正直、絶対行きたくない。狂ってしまうだろう。
 そして平和が崩壊するだろう。

「きゃはははははは!死んじゃえ~死んじゃえ~♪」
「みちるっ・・・?やめてええええええええ!!!!!」
「きゃはははははははは!」
 そう、皆死んじゃえばいいんだ。
「死んじゃえ~♪死んじゃえ~♪」