神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

美しき悪魔 第三話「連続殺人」

 次の日。下駄箱で靴をはきかえてると、早起きで有名な根本さんの靴がなかった。
「あれ・・・根本さんがいない」
「・・・根本さんとかテニス部メンバーは先輩も含めて行方不明らしいよ」
 嗚咽をあげながら必死に説明してくれる女子。そして、嗚咽をぴたりとやめ、こういうことも言い出した。
「元メンバーの木山みちるも行方不明だって。これに便乗して消えたのかなあいつ」
 完全に恨んでる声だった。彼女はちょっと自己中すぎる。そこが女子どころか男子の反感までかい、私に大ケガを負わせたときなんか男子に責められてたっけな。なのに彼女は、笑っていた。まああのときから悪魔がついてたから仕方ないだろうけど。
 教室まで寂しいので、その女子と一緒に歩く。
「・・・お花のお水換え大変そうだね」
「・・・そだね」
 重苦しい空気。私たちのクラスでは1週間お花を亡くなったクラスメイトの机に置く。
「あっ・・・」
 教室の扉を開けると、テニス部女子の机にお花があった。昨日の3人の机にもだけど。
「ううっ・・・そんなあっ・・・」
「嘘・・・」
 これにはさすがに私もこたえた。先生は無言で教室に入り、黒板にこう書き残していった。
『不安な人はカウンセリング室へ』
 私はたえよう、と決心した。カウンセリングなんか受けたら両親が心配する。それは嫌。
「今日は自習だって・・・」
 男子評議委員がやってきた。目の下にはくまが。
「自習なんかっ・・・!」
 多くの人はカウンセリングに行った。私は図書室に行くとしよう。
 図書室に行くと数人生徒がいた。自習なんてできない、と思った人がいるのだろう。
 しかし私は疑問に思った。マーチュリアルと敵対しているのならば、なぜ彼女と同じように学校を破壊しているのだろう?まさか破壊し終わる日数勝負?
 10分ぐらいだろうか。適当にその辺にあった雑誌をパラパラめくってた。内容なんてどうでもいい。その時だった。
<配布物がありますので、生徒は一旦教室に戻ってください>
 無機質な放送。生徒たちはびくりと反応し、散っていく。さ、戻ろう。

「プリントを読むように」
 テニス部女子は確かこのクラスだけで8人いたはず。昨日の白鳥さんたちも含むと女子は10人もいなくなったことになる。
「うっ・・・」
 内容はおぞましかった。
内容→【事実をあまり伝えたくないが、テニス部2、3年生を殺した犯人は彼女らの断末魔をわざと昨日の放課後、こちらに流してきた。『やめて!木・・・』や『みち・・・』と聞こえたため、同じく行方不明の木山みちるが犯人だとされる。だがしかし、彼女は腕力も恨みもないはずだ。何か知っていることがあれば先生たちに】
 途端、泣き出した。叫んでいる子もいる。
 みちるは手始めに恨んでいるテニス部メンバーを殺した。傍観してて関係のない先輩に対しても『救ってくれなかった』と思って殺したのだろう。しかし、2年生だけで20人、3年生なんか35人だ。みちるは捕まれば遺族たちに袋叩きされるだろう。
「先生!みちるは、昨年大久保さんの腕にわざとテニスボールを投げたんです!それが原因でしかも自業自得でやめさせられたのに、自分に同情してくれなかった、と先輩たちと同学年女子を恨んでるんですよ!」
「・・・彼女を救えなかったものなのか」
 私は、立ち上がって発言した女子に代わり、立ち上がって発言する。
「みちるは・・・昨年の5月からおかしかったんです。私がさっそく大活躍したのをきっとよく思わなかったんでしょうけど・・・」
「じゃあさ大久保さんは木山を許すっての?」
「許すわけない」
「でしょでしょ!?あいつ死刑だよ!」
「まあ落ち着け。55人も殺害されたとなれば当分テニス部はダメだな」
「・・・」
 職員会議が行われるとのことで先生はバタバタと出ていった。
 先生が出ていき、廊下を歩くとまるでゴーストスクールのようだと思った。明るくて元気が取り柄のテニス部はもういない。それに2年生を中心に殺害されている。精神崩壊し、入院する人もいる。
「おや、どうした?大久保」
「会長・・・」
「生徒会長として事件を把握したいと申し込んだ。そしたら・・・。残酷な写真を見せられた」
「ちょっと、私に見せなくても・・・」
 テニス部女子がぼこぼこに殴られていた。金属バットで殴られているよう。特に顔と腕の損傷が酷い。
「かなり殴り続けたようだな。特に恨んでいる人に対してなんか手がなかった」
「根本さんとかの?」
「名前はよく覚えていないが、テニス部女子のチャームポイント・ポニーテールと手と足がなかったなその子」
「うわあ・・・」
 そして会長はふうっ、とため息をついた。
「先生たちも疲労困憊って感じでな、数人いなかった。特に若い先生なんか実家に帰った人もいるらしい」
「うーん、どうにかできない?」
「無理だろうな。ルマ以外フルパワーは使えない。シズも中々回復できてない」
「そんな・・・」
「しかしみちるを捜しだせば少しは減る。無駄に命を失うことが」
「会長は知ってる?みちるの性格の悪さ」
「ああ、まあな。副会長がテニス部の女子なんだが・・・みちるがね、とか悪態ついてたな」
「生徒会も危ないの?」
「ん、まあな」
 会長は私に紙束を渡された。
「補佐よろしく」
「仕方ないね」
 とりあえず紙を読んでいくと、白鳥さんの生前の写真と遺体の写真が並んではってあったりと若干死者への冒涜なのでは?と疑いたくなるものばかり。
「全く。この学校は休校になると思わないか?」
「うーん、確かに」
 私たちは静かな3F廊下を歩く。特別教室があるが、それぞれにテニス部女子の遺体があるのだという。
「最初見たときは気絶しかけた。しかも、ほら」
「寒いと思ったら」
 廊下の窓と特別教室の窓が壊されていた。
「理科室の道具をはじめ、多くの物が壊されていた。美術部は昨日も部がなかったから被害はなし。しかしポスター等作品は破壊された」
「うわあ・・・そ、それは」
『やっほー☆』
 セイラが血だらけのかまを持って現れた。彼女自身も血まみれだ。
「私とセイラは一心同体。私は金属バット持ってるけど、セイラはかまなの」
『あはははは!』
「に、逃げるぞ!」
「うん!」
 私はこの学校がどうなるか不安だった。

『マーチュリアルが目覚めた!?』
『らしいのよ。あたし、シズから聞いた』
『困ったわ・・・』
 マーチュリアルは悪魔の中でも特別危険殺人鬼である。しかし、彼女はなぜか突然消えた。そして・・・人間になったのだ。私は信じたくなかった。

「お別れ会・・・」
 転校してしまう子に対してしたことはある。でも、今回は亡くなった人に対してである。
「うーん、行く気しない」
「佳梨那ー!行くわよー!」
 土曜日になった。このお別れ会後、実家に帰ると宣言した先生が何人かいるらしい。
 母親に連れられ、私は学校の体育館に向かう。
「うひゃ・・・」
 写真、というか遺影が並べられている。白鳥さんはやはり美人のようだ。
「みちるは来てないね」
「あいつなんか来ないでほしい」
 みちるの陰口が目立つ。仕方ない。55人を殺してしまったのだから。
「あら、大久保さん・・・」
「まあ!」
 お母さんがお話している間に会長と合流しようと思い、私は校舎に向かう。
「じゃ~ん!」
「うわっ・・・」
 廊下を歩いていると突然頭上から生首が。
「悲鳴をあげる顔が素晴らしくってとこか?」
「誰!?」
 後ろを振り向くと、麻智子・・・いや、マーチュリアルと思われる人がたっていた。