神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

美しき悪魔 第一話「妖しい転入生」

 2年1組は今日も賑やかで楽しかった♪、と私は日誌に書き込む。麻智子たちを待たせているので急がなければいけない。
『放置すればいいじゃなあい?そうすれば楽になれるわ』
「・・・うるさいなあ」
 悪魔が脳内で囁き始める。
『あらあらん?そんなこと言わなくてもいいじゃなあい』
「・・・」
 私は無視して、職員室にいる先生の元に向かった。
 しかし、着いたところで【会議中】という紙があった。無念。
「あーもう、走ってもダメだった・・・」
『あんたねえ、元から間に合うはずなんてなかったのよお?いちいちぐちぐち言わないでくれる?』
「・・・ 」
 この悪魔は時々私の記憶を食べる。それは気にしない。なにせテストの時に答え教えてと私が悪魔に頼んだから。
「大久保、終わったのか?」
「は、はい。あの、日誌です」
「ごくろうさん!じゃあな」
「さようなら」
 先生は新婚で最近は上機嫌。あんなに明るいとこちらも対応しにくい。
「あ、早く行かないと」
『走らないでねえ』
「分かってる」
 私は今度はゆっくり歩き出した。

 4階にある使われていない教室を借りて私たち4人は毎日話している。悪魔について、である。
「遅れてごめーん」
「あ、佳梨!遅いよー」
 2学期になるまで精神科に入院していたという小野寺麻智子。理由は記憶があまりないことを心配した過保護な両親のせいらしい。
「会長より遅いってどういうことだよ」
 乱暴な口調の浦和春樹。彼は彼で苦労している。
「心配したんだからな」
 会長こと琴林翔。美少年で生徒会長でそして勉強もできるということで女子に大人気。
「日直でさ、教室の鍵閉めもしてたの。ほら、私のクラス仲いいからさ中々帰らないの」
「あーそういえばそうだねえ。私が転入した6組はむちゃくちゃだよー」
「それ言うなら会長と俺がいる2組なんてよ、女子が『春樹と翔が付き合っている』っていう噂たてやがってんだ」
「え、嬉しくないのかい?」
「あったりめえだ!」
 ただ、会長は自他共に認める大の男好き。そのため女子はファンにはなるがそれ以上は近づかない。
「今日は私、お菓子持ってきたの」
 いつものように椅子に座る。そして持ってきたマカロンを出す。
「「「マカロン!」」」
 3人の声がそろう。私たち全員スイーツ好きでもある。
「じゃ、私はイチゴ!」
「じゃあ俺はキャラメルな!」
「僕は春樹が食べたキャラメル味を半分貰うよ」
「誰がやるか!」
 私はチョコ味をとり、ほうばる。うん、おいしい。さすが私のお母さんの手作り。
「ほら会長の好きな抹茶味があるよ」
「ん、じゃそっちも食べようかな」
「やめろお!か、間接キスはしたくねえ・・・」
『ねえ、ちょっと姉さん』
『なあに?人間の具現化は嫌だってわめいてたくせに』
 いきなり麻智子の脳内に住む悪魔・ルナが私の脳内に住む悪魔・ルマに話しかけてきた。
『あたし、姉さんより大分弱ってんのに悪魔の気配感じる』
『は?』
「え?」
 人間に具現化したルナは蒼くて長い髪だが、その髪がうねっている。敵対する悪魔が近くにいる証拠だ。
『姉さんは鈍感だから気づいてないだろうけど、アンテナはってみて』
『・・・!こ、これは盟友関係を築いていない悪魔!?』
『・・・しかも具現化してるよ、最悪だね』
『シズ、あんたの透視能力はあたしも認めている能力だけどお願いだから恐ろしいことは黙ってて』
 ちなみに会長の悪魔がシズ、そしてよく寝ている怠け者の悪魔・ドゥが春樹の脳内にいる。
 ちなみに盟友とは、私たち4人のように主が仲良くしていると自動的に形成されることが多い。悪魔同士では恥ずかしくて盟友関係は結べないとか。
『危険な香りがするわ。ぞくぞくしちゃう!』
『もう、姉さんってば!』
『・・・!』
 シズが途端に倒れた。会長と真逆で大人しいシズは察知能力も優れている。まさか・・・。
「悪魔が近くに?」
「どうせお散歩してるだけだろ?」
「確かに夏休みの時はそうだったけど。僕としては今回は違うような・・・」
「ま、まあ少し待とうよ。待ってても起きなかったら学校から離れよう?ね?」
「ん、そうね。麻智子」
 しかしシズはすぐに起き上がり、呟いた。
『今すぐここから離れろ』
「え!?」
『どうしたのかしらん』
『シ、シズくん?どうしちゃったの!?』
 シズが危険を察知している・・・!私たちは学校から一番離れたところに住む会長の家に向かうことにした。

 夏休みの時もそうだった。ルナとルマが突然『海に行きたい』と言い出したことにより、4人全員ろくに泳げないのに海に行った。そこで海辺を散歩する悪魔と遭遇してしまいシズがぶっ倒れた。海辺から遠い会長の家へ行くことになった。
「しかし、それにしても敵対する悪魔って・・・」
「詳しくは僕が夏休みをかけて調べてみたが分からなかった」
『そりゃそうでしょう。あたしたち悪魔は一体何人いるかも分かんないんだから』
「ねえ、具現化ってキツイもの?」
 麻智子が首をかしげる。確かに、移動中悪魔たちは具現化してなかった。
『敵対する悪魔に見つかりやすくなるだけだわ』
『ドゥは一度、それにより怖い思いしたんだから』
「嘘、そうなんだ」
 他愛もない会話を続けて、6時には別れた。
 結局ドゥはでてこなかった。

「転入生だっ!」
 翌日。先生が大声で叫びながら入ってきた。
「シャルルさんだ」
「シャルルドゥ=アンドリュウですわ。よろしくですわ」
 上品で、しかもゴスロリ姿の彼女に誰もが目を奪われた。だが、彼女の目は冷酷だった。
「ルマテイック=ホウルセイ=アンドレ、あんたを今度こそ殺してア・ゲ・ル」
 私の横を通りすぎる際、彼女はそう呟いた。
 お昼休み。いつもどおり4階へ行くと珍しく春樹が早めに来ていた、
「どうしたの?2人は?」
「ドゥたちを捜しに」
「えっ!?」
 確かにルマも大人しい。と思いきやいない。
「嘘でしょ・・・!?」
「会長は今、1階にいる。そっち行くといいぜ」
「そうする」
 1階・調理室に会長はいた。ここの中学校にエレベーターがあって本当に助かった。
「来るな!大久保!」
「えっ!?」
 調理室には不気味に笑うあの謎の転入生がいた。ま、まさか・・・!
『あたしの本名を知っていてあんな偽名を考えるとはやるじゃない、セイラ。妹は?』
『あはははは!ばっかじゃないの!?私がいつセイラだと名乗ったぁ?答えてみろよ!あん?』
『姉さん、こいつはセイラじゃない』
『確かに』
『そうだぜ』
『・・・でも、セイラの妹は私のことってまさか!』
『あははは!そのまさかよ、ま・さ・か』
 笑い続ける悪魔(?)会長が私の元にやってきた。
「昨日シズが倒れたわけはセイラという因縁の相手が近くにいたかららしい。朝そう聞かされた」
「・・・シャルルなんとかって転入生がセイラなの?ややこしい」
「ああ。しばらく放置しよう。壊されはしないだろうし」
「そうだね」
 お昼を2人で食べ、教室に戻るとざわついていた。5分前ということもあり、先生が来ているにも関わらず。
「ねえ何があったの?」
「・・・知らないの?2階の図書室でシャルルさんと小野寺さんが消えたんだよ」
「嘘・・・!」
 私はそのことに耳を疑った。確かに春樹は会長と麻智子が一緒にいるとは言ってなかった。でも、そんな・・・!
「どうしたの?顔色、悪いよ」
「ん、そう?」
 でも私は気になる。立ち上がり、先生に告げた。
「気分が悪いので保健室に行ってもいいですか?」
「ええ、いいわよ」
 麻智子は無事なの!?