神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

VOCALOID学園 第12話「バレンタイン騒動」

「今年も年に一度の辛い日がやってきたでござる」
「はいはい。義理チョコもってきてやったわよ。義理をね」
「あ、あんまりでござる」
「朝から人んちに押しかけておいて・・・!何様じゃあ!」
「テト殿~落ち着くでござる~」
「テトはチョコ作れないんだよね」
「うん。ああ、賞味期限切れのフランスパンが出てきたからこれを今朝の朝食にしなよ」
「うぐうっ」
 テトは、あと数ヶ月でニート生活が終わる。14年間もニートしていたら辛くないのかしら。
「じゃ、カイト待たせているし。行ってくる」
「イチャイチャするのでござるか?拙者も・・・」
「がくぽはあたしが押さえておくから早く行ってきなよ」
「はいはい。いってきまーす」
 カイトにはスペシャルなものを渡す予定。
「カイト、おはよう」
「おはよう、めーちゃん」
「ほら、今日バレンタインだからチョコアイスシュークリーム。手作りよ」
「うわあ、ありがとう!」
「職員室で食べてね」
「うん!そうするよ!」
 この笑顔がたまらない。

「はい、デル兄さん」
「ああ、ありがとう。学校で渡すか放課後でも良かったのに・・・」
「放課後とか学校だと、女子軍団に負けるし。いくら従兄弟とは言えはじかれる」
「ああ、そうか」
 私は家を出て、すぐミクと合流した。
「はい」
 ミクと同時にチョコを差し出す。思わずぷっと笑ってしまった。
「ナイスタイミング♪」
「ミクちゃんのはどんなの?」
「開けてからのお楽しみ~♪」
「あはは、もうっ」
 すっかり仲良くなれて私は一安心している。
 他愛のない会話をしながら学校に向かっていると、メイコ先生たちが車で到着したところだった。
「うわあ、すごいラブラブ・・・」
「本当だねえ、ハク」
 すると、ネルが全力で走ってきた。
「ふう。今日は起きれたよ!朝からネットできたぐらいに」
「へえ」
「あ、そういえばネル。会長たちは?」
「ミク、わかるでしょ?朝からもうイチャイチャしているよー。『ピコくん、あーん♡』『あーん♡ん、おいしい♡』『だよね!私の手作りなんだ♪』『えへへ、さすがミキちゃん♡』『ピコくん♡』以下略」
「大変、だね・・・。料理ってどこで・・・?」
「共同スペースの建物には色んなのがあるよ。文具屋とか」
 共同スペースの建物には文具屋、料理スペース、ゲスト宿泊所、パーティ会場、共同食堂がある。
「私も前ネルと一緒にお菓子作ったよね」
「うん」
「あ、そうだ。デルさんってそろそろじゃ・・・」
「避けよう!すぐそこの大学部でもいいから一時的に!」
 この日はなんと、昨年の状況から今年も察した理事長が大学部1Fのロビーを開放している。未知の世界。
「ふう。あ、ルカさん」
 ルカ先輩が、絵になるような感じで座っていた。
「私、疲れちゃって。譲る友達もいないから、生徒会メンバーにあげようかなって。いる?」
「あ、はい!」
 ネルが遠慮なく返事をする。そういうの遠慮しなよ・・・。
「でももうすぐ卒業なのよね。少し、辛いわ」
「・・・1日が卒業式、か」
「ルカ先輩!お別れ会開きますよ!」
「ありがとう」
 大学部から渡り廊下を使い、高等部に向かった。
「ねえミク。私たち2年生になるんだよね。先輩、かあ」
「うん。でもリンちゃん大丈夫かな」
「そこ心配しちゃう?」
「あはは」
 いつまで笑いあえるかな。

「レンくん、はいチョコ」
「うわあ、デカい」
 マユのことが好きなのかな、レンくん。私のことを見てくれない。
「レンくん!私も作ったの」
「ああ、ありがとう」
 少しそっけない。でも、これでいいんだ。

リュウトくん、はいチョコ」
「あ、ありがとう」
「ユキさん。僕にはお祝いチョコとか」
「あるわけない」
「うっ」
 キヨテルせんせーがまた倒れた。

「それぞれ色んなバレンタインを楽しんでいるみたいだね、ミキちゃん♡」
「ピコくん、私はねマフラーとチョコ持ってきたの!」
「ミキちゃん大好き♡」
 ピコくんとのキス。ああ、もう何回目かな。

「ああ、おいしい。さすがめーちゃん」
「おやおや。さっそく未来の奥様からチョコを?」
「うん。ってみ、未来の奥様!?」
「あははー。ほれ、私から義理。ちょいと余ったから」
「あ、うん。ありがとう」
「そんじゃっ」
 めーちゃんは苦手な料理を克服しつつある。いいことだ。
「おいカイト」
「うおっささら」
「ちょっとこい」
 放送担当のさとうささら。放送室まで半端ない力で引っ張られる。
「タカハシという新人からバレンタインにチョコをあげると倍返しで戻ってくると聞いてな。チクんなよ」
「あ、うん」
 しかし、ささらからもらった3個のチョコを倍返しだなんて・・・。
「他の男子も捕まえるから早くどっか行け」
「あーはいはい」
 出ると、ちょうど弦巻マキに会った。
「タカハシくんを知らないか?学校案内をしようと思ったんだが・・・」
「え、知らないけど」
「少し捜すの手伝え」
「ぐわっ」
 先程より半端ない力で手を握られる。痛いって!
「手、ちぎれるっ」
「ん?ああ、すまない」
「それでどの辺で待ち合わせとかは」
「!そういえば今日はバレンタインというので、混んでいたな」
「と、とりあえず突入頑張って!」
 僕は逃げるようにして去った。

 僕、タカハシ。ひょろりとした体。現在、女子たちに挟まれている。
「ターカーハーシー!」
「マキさん、だっけ・・・」
 薄れかけていた意識を引き戻してくれたのはマキさん。僕の先輩。
「女子共、少しどいてくれないかな」
「えー仕方ないなあ」
 やっと解放された。安心した。すると思いきり殴られた。いい音が響く。
「騒動起こすな」
「ハイ」
 とりあえず先輩は怒らせてはいけない。それを学んだ。