神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

VOCALOID学園 第6話「恐怖の転入生(上)」

 僕は朝からアイスを食べながらのんびりしていた。今日は始業式。職員室では他の先生が忙しそうにしている。
「カイト!転入生よ!」
「・・・めーちゃん、何?」
「初めまして!マユです」
「2-Aにこの子入るらしいからよろしく」
「え、ソニカ先生は?」
「何かね、忙しいらしいわ。誰かと違って」
「・・・」
「よろしくお願いしまあす!」
 僕は持っている斧と人形が気になった。
「これは・・・何?」
「触るなああああ!」
 斧が目の前をかすめる。怖いっ!
「事情はあとで話すから、とりあえず案内してやって」
「はい・・・」
 にこにこ笑う彼女には、不気味さも感じられた。

「うっ」
「どうしたの?レンくん!」
「なんか寒気が・・・」
「きっと気のせいよ!でも暖めてア・ゲ・ル♡」
「近寄るなよ・・・」
「おーい転入生だ」
「あ、カイト先生」
「聖マリア女学園付属中学校から転校してきました!マユです!よろしくね」
「かわいい!」
 クラス中から制服がかわいいとか彼女を褒める声が聞こえる。でもそんな彼女は俺を見つめている。
「きゃあレン様♥話に聞いたとおり素敵ですわ♥」
「えっ」
「ちょっと、レンくんは私のものよ!」
「いいえ、リリィには渡さないわ!」
「・・・」
 いつからリリィのものに?しかも、カイト先生曰く、もう1人俺を愛しているとか言う奴がいるらしい。
「ま、ソニカ先生が来るまでゆっくり話をしてて」
「はあい♥」
「ね、ねえその斧って・・・」
「リボンが可愛いでしょう?うふふ♥今日のために血がついたリボンは捨てて新しくしたんだから!」
「え」
「ごめんね、皆~。遅れたわ。さ、マユちゃんはレンくんの隣に」
「!?」
 リリィが右隣、マユが左隣・・・だと!?

「転入生?」
「そうそう。後で見に行こうよ」
「ほら、話してないで!朝のHR始めるわよ」
「はあい」
 ネルちゃんは私が楽しそうにハクちゃんと話している時にうかない顔をしていた。どうしたんだろう?
 HR終了後、その理由を聞いてみた。
「体育祭が終わった後ぐらいかな?新聞に中学2年生の女の子が殺人未遂をしたって載ってたから・・・まさかと思って」
「そんなことないって絶対!」
「そう?」
 1時間目は数学1。始まる前に見に行くことにした。
「レンくんなう!」
「レンくんなう!」
「・・・・・・」
 ゴスロリの服を着た女の子がいた。斧と人形を持っている。
 その子を入り口に呼ぶ。
「あの、あなたが転入生?」
「はい、マユです」
「かわいいねその服」
「ここの制服が地味だったのでアレンジしたのですわ」
「その斧は?」
「聞くんじゃねえよ」
 小声でキレられた。何か悪かったかな?
「それではまたごきげんよう!」
 唖然としている私たちを置いて「レンくんなう!」と言いながら戻っていった。
「あれ・・・お嬢様だよね?」
「ご令嬢かな」
「怖い・・・」
「3人共、いい?」
「は、はい?」
 午後以外暇なんだろうメイコ先生が同じく暇そうなカイト先生と一緒にいた。
「彼女に逆らってはダメよ。殺されるから・・・ね」
「えっ」
「どういう事情なのかは後で調べようと思うから」
「はい」
 そのあとも気になり、授業中ぼうっとしていた。

「ミキ、ミク、ハク、ネル。あなたたちに極秘情報を伝えるわ。先生にはあなたたちから言って」
「?」
「あの転入生、殺人未遂をしたみたい。噂なんだけどね」
「あ、まさか・・・」
「ハクは見た?中2女子が斧で同級生をズタズタにしたという事件。学園には高いプライドがあるからその事件は極秘に片付けられ、噂レベルにおさえられてしまった・・・」
「凄い事件ですね」
「・・・私たちが真相を確かめるわけにはいかないんです。特に私や生徒会長はA組なので」
「それで、B組の私やミク、ネルが・・・」
「ちょっと、その噂本当!?」
「うわっ」
 スイカバー片手にメイコ先生が現れた。後ろからはカイト先生が。
「ちょ、めーちゃん!それ僕の」
「お、当たり棒!・・・それよりもルカ、それは本当!?」
「え?何?」
「カイトは黙ってなさい」
「あう」
 ルカ先輩が語り出す。メイコ先生は時々頷きながら聞いている。
「真相解明に今週末行きましょう」
「わかった!」
 どうやら2人は乗り込む気らしい。

 病室で私はまた悪夢を見てしまった。ミズキ先輩とマユがキスするという恐ろしい夢。どうして、マユはああなったの?
「どうですか、事件については」
「・・・私はなぜマユがあそこまで暴走したのかわかりません。でも、彼女は執着心が激しい子ですから。何か、噂話にでも惑わされて私と喧嘩になったのでしょうね」
「な、なるほど。いやはや今回の事件は・・・その、男女の痴情のもつれではなくて・・・」
「女子同士ですわ。悪いですか?」
「い、いえ。女学園だから当たり前ですね」
「うふふ。傷が癒えたら私は早く先輩に会いたいです」
「早く治ることを祈ってますよ。では今日はこれにて」
「はい」
 もう9月。あれから4ヶ月も過ぎたのね。マユ、いつかまた会いたいな。