ボーカロイド学園 第4話「体育祭へ・・・!」
「グミさーん、めーちゃんが呼んでるよ」
「バカイト、その呼び方はやめて」
高等部の先生に呼び出しされるなんて思ってもみなかった。私は何事かと急いで行った。
「あなた、不正でBに上がったんでしょう?ルカたちから聞いたの。別に怒りはしないけど、これからは心を入れ替えるべきよ。もうC組とは縁を切りなさい」
「・・・」
ピシャリと言われ、返す言葉がなかった。カイト先生の幼馴染なのに、どうしてここまで雰囲気が違うの?
「私は・・・ラピスやリンと友達のままでいたい!どうしてダメなの?」
「はあ。あのね、彼女たちは不良よ、ふ・りょ・う!いい?新しく友達を作りなさい。同室の子と仲良くするべきよ。ええと・・・確かいろはちゃんだっけ?」
そう言いながら許可を得ていないのにおいてあるカイト先生用ロック付き冷凍庫を開ける。
「カイト、スイカバーもらうわ」
「え、ちょ、ひどい」
「もう寮に戻りなさい。疲れているでしょ?明日も練習だしゆっくり休んで。・・・お、当たり」
「めーちゃん、それ返してよね」
「やーだ」
完璧にお2人さんの世界だ。私は寮に向かう。
「にゃ~!」
「うわっ」
猫村いろは・・・だっけ?この子。
「もう、遅いにゃ!待ちくたびれたにゃ」
「あはは、ごめんごめん」
「・・・グミ」
「リン!あのね、実は―」
「もういい。さよなら」
いろはちゃんがにやっとした。
「修羅場、にゃ?」
「うん、そうかもね。どうしよう・・・」
「気にしないでいいにゃ!さ!」
「うん・・・」
リン・・・どうしたら・・・この誤解を・・・。
グミがあんな子と仲良くするだなんて、もう知らない!
「リンちゃん、素直になったら?」
「ハ、ハクさん!?」
「ふふふ。本当は仲良しでいたいんでしょう?」
「ま、まあね・・・」
「体育祭、クラスは違うけれど頑張ろうね」
「はい!!」
あの人って本当は凄いんだなあ・・・。
体育祭当日。私のお母さんはおじいちゃんたちも引き連れてやってきた。
「ミク~!頑張ってね!」
「ふぇええ・・・」
「ミク、いいなあ。あんなに家族いて」
「ネルちゃんの所は?」
「え?ああ・・・私が小さいころ、集団感染に巻き込まれて死んじゃったの」
「そうなんだ・・・」
「気にしなくていいよ。私、物心がついた時からここにいるし。両親の顔なんてあまり覚えていない」
どうも、教師だったらしく、学校で感染したそう。
「リンちゃんは大丈夫でしょうか・・・」
「ハク、顔面蒼白だよ?ほら、二人三脚練習しよ?」
「ひいっ!」
2人は仲がいいものの、運動神経は・・・極端すぎた。ハクちゃんは運動が大の苦手で、ネルちゃんは大得意。本当に、大丈夫なんだろうか?
「お、おはようございます・・・」
「あ、リンちゃん。ハクちゃんに用があるの?」
「お昼一緒に食べてもいいですか?」
「もちろんだよ!今聞いて来るね」
ハクちゃんはネルちゃんにほぼおいて行かれている。可哀想・・・。
「ハクちゃーん!リンちゃんが一緒にお昼食べたいって!ネルちゃんもいい?」
「もちろんだよ!ね、ハク」
「う、うん・・・。とりあえず休憩しよう・・・」
リンちゃんはぱあっと顔を輝かせている。やはり、何かあったんだろう。
「あらあら。随分と仲がいいのね」
「あ、ルカ先輩!」
「私も一緒に食べてよろしいかしら」
「ええ、どうぞ」
「・・・では、私も」
よかった。これでお母さんとおばあちゃんが共同で作ったメガ弁当を分配できる!
私が中学生の頃、たくさん弁当を作って私に食べさせてくれた。おかげで午後のプログラムはハチャメチャ。クラスの中心的存在に睨まれるし、非難の目を浴びせてきた男子もいた。もう2度とそんなことは起こしたくない。
『生徒の皆さんは開会式が始まりますので、集合してください』
さあ、開始だ!
「レンくーん♡待ってえ!置いてかないでよ!」
「うわあああ!ちょ、何なんだよ」
あれが、リリィが勧める鏡音レンって子ね。
鏡音レン、14歳。中等部2年A組の秀才。バナナが大好き。寮暮らしで同室にはピコっていう同じくA組の人がいる。
「マユ~珍しいじゃん。どうしてここに来たかったの?」
「私の友達がいるからね。さ、もう帰ろう」
今のところ、Cが1位で、ルカ先輩と同じクラスの人たちがイライラしている。中には、後輩のA組生徒にわめいている先輩も。
「次は二人三脚だね」
「うん・・・」
「ハク、大丈夫だって!ね!」
2位であるB組にも容赦ない視線がA組の先輩からそそがれる。はあ・・・。秀才ってそんなに勝ちたいの?
「みんながんばって!」
「!?」
ユキちゃんがA組応援サポーターなんだろう、私の足を踏みながら言った。
「あ、ごめんなさい。ユキが意地悪で」
「リュウトくん、これはほんきのバトルよ、だからたクラスのひとなんて」
「ユキさん、ほら迷惑じゃないですか」
「あ、先生・・・!しつれいしました」
何だったんだろうか、あれ。本当におかしな人たちだったな・・・。
「きゃあ!」
私は結構近い場所で見ていたのだが、ハクちゃんが目の前でこけた。もちろん、ネルちゃんも。
「ごっめ~ん!」
A組だ。これに勝てば2位になれるからわざと・・・?
『A組!なあにやってんのよ!』
放送席からメイコ先生が怒鳴る。もちろんマイクを使って。
『今のは不正だからね!今回は私が得点係よ、ざまあ!』
「・・・」
A組の生徒の親も生徒たちもポカンとしている。カイト先生が慌てて
『こ、言葉が乱雑ですみません!ええと、今弱音ハクさんたちがこけたのはA組のせいです。よって、A組は-2させてもらいます』
と訂正した・・・。
お昼。午前中は結局、あの騒動後Aが2位になってしまい、Bの生徒は落胆していた。
「さあ、皆さんどうぞ!」
「・・・」
皆がやはり驚いている。ハクちゃんなんか、お弁当なくてよかった、っていう顔をしている。
「遠慮なく頂きますね」
「ルカ先輩、大食いなんですよ」
「んもう、ミキ、個人情報はばらさないでちょうだい」
「あはは・・・」
私たちが仲良く食べる中、リンちゃんは時々視線を別の場所に向けていた。
猫村いろはちゃんとグミちゃんの方。やっぱり、今でも気になるんだろう。
「どうもこんにちは、蒼姫ラピスです」
「あら、可愛い子ね」
「リンちゃんの友達?」
「うん。うわ、ルカ先輩もうそんなに食べたんですか!?」
「うふふ」
先程、かしわ飯を山ほどついだばかりなのにもうない。すごい!
「あら、美味しそうね」
「メイコ先生!」
「いただき!うーん卵焼き絶妙だわ」
「めーちゃん、僕のお弁当のおかずも取っていって生徒のまで・・・」
「カイト先生、大丈夫ですよ。余るぐらいありますから」
「あ、そうなんだ」
お昼を楽しく食べたあと、メイコ先生が用があると言って私を連れ出した。
「え?がくぽ先輩のことですか?」
「そうよ。まさか・・・今日補習しているのかしら」
「さあ?」
「はあ。どうしようかしらねえ」
「・・・」
「めーちゃん!がくぽいたよ」
「あら、本当?」
「いやあ、すまないでござる。拙者、剣道の試合を見てて・・・」
「このバカア!」
このあと、がくぽ先輩が結局見学になったのは言うまでもない。
午後はA組がどんどん得点を稼ぎ、遂に1位になってしまった。だからといってルカ先輩は別に気取らない。気取っているのはその周りの人達だけ。
「はあ、結局最下位だったね」
「本当」
BはCにも負け、今年の体育祭は終わった。
「何だよ、リリィ。急に・・・」
「ねえ、はっきりしてよ!私のこと好きなの?嫌いなの?」
「え、どうしてそんなことを・・・」
「とにかく言って!」
「・・・今、僕は恋愛なんかに興味はない。これから好きな人ができるのかもわからない。今は保留にしておくよ」
「・・・そんなあ」
私の告白をそっけなくスルーするところもまたかっこいい。
「マユ、これで分かった?2学期からは2人でストーカーしようね」
「了解♥」
マユはにっこり微笑んだ。