神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

ボーカロイド学園 第3話「ランクUP!」

「今月のランクUP者は・・・グミさんです!」
 わけのわからない先輩になだめられてあたしは少し大人しくすることにした。先公にも伝わったらしく、その数週間後である昨日には復活した。
 でも、今のは聞き捨てならない。月末に必ずある学力テスト。音楽の専門学校でも一応そういう基本的学力は高めたいらしい。それで、今担任はグミが好成績を取ったとかどうのこうの話している。あたしは我慢が出来なくなって立ち上がった。
「リ、リンさん!どうしましたか?」
 驚いた担任があたしを怖そうに見る。怪物じゃねーってば。
「気分悪くなったから少しぶらついてくる。放っておいて」
「あ、はい・・・」
 グミとは大親友でよく万引きしたり、悪いことをたくさんした。勉強は年の離れた兄貴と真逆でやりたくない、といつも言っていた。しかもあたしと違って寮生だから両親は関与してこないはず。グミ、どうしちゃったのかな。
「ふう・・・」
 授業中、というかテスト結果発表中でわーぎゃー聞こえてくる。こういう時は高等部の空き教室に行くと結構いいんだよね。

 あたしがよくグミとたむろう場所でもある教室は結構放置されているらしく、落書きされ放題だった。ここが使われなくなったのはベランダでの落下事故が原因だとか。バカなあたしにも伝わってきた。
「あら、先客がいたのね」
「ル、ルカ先輩!?」
 ナイスバディ、成績優秀、生徒会長、そして高等部3年A組の巡音ルカ先輩が突如入ってきた。
「しかもよく見たら中等部生じゃないの。あ、怒らないから安心してね」
「あの、ど、どうしてここに?」
「ふふふ。気分転換でたまにここに来るのよ。私、別に努力したってしなくたってクラスは変わらないのだから」
 少し寂しそうな横顔。やはり、生徒会長って気苦労が多いんだろうか?
「リリィがよく余計な事をするのよ。ミキは副生徒会長として落ち着いているのだけれど、リリィは他人の成績まで思い通りに変えちゃうの。私の成績もよく改ざんしているのよ、あの子」
 いつの間にか愚痴に変わっている。・・・リリィ?
「あ、リリィさんってA組の中でもレンと争うっていう成績優秀な子ですよね?」
「・・・表向きはね。本当は改ざんしているらしいの。でも、彼女の親が凄い大手の社長さんだから私も逆らえない。今回も余計なことしてないかしら・・・」
 一瞬、グミの事が思いついたが、あのリリィさんが落ちこぼれを救おうとするわけなんてないよな、と思い黙っていることにした。
「ふう。ところで、あなたはC組の生徒さん?」
「え、どうしてわかったんですか?」
「その派手な格好とリリィをさん付けで呼んだからよ」
「・・・まあ、あの人にあこがれてますから」
「憧れない方がいいかもよ。悪影響ってやつ受けるから」
 クスッと笑うと、ルカさんは立ち上がった。
「リリィのように戻れなくなる前にBに上がった方がいいんじゃないかしら」
 女神のように微笑むその姿に私は感動した。

 テスト結果発表は4月最後の週の月曜日にされた。その次の日から体育祭に向けて誰がどの競技に参加するかを決める。2‐Cはスポーツだけが取り柄だったが、グミが抜けてふにゃふにゃになってしまっている。
「あたし的にはーこの状況納得できないんですけど?」
「いや、その・・・ね・・・」
 そう、Bに移ったグミと2人3脚で対決することになったと紙が回ってきた。あのへなちょこ先公が決めたのかな?
 あたしはルカ先輩に言われた通りスカートも長くして、校則違反なんてありません!って格好にした。すると先生たちからじろじろ見られ、挙句の果てには高校の先生がメモを取る始末。(この子はまじめになったとかメモしたんでしょ、どーせ)
 でもまだもやもやする。グミ、あの後なにも話しかけてこなかった。どうして?
「リン~!ちょっと聞いてよお!」
「ラピス、どうしたの?」
「お母さんがね、今度のテストでクラスが上がらなかったら公立中学校に通わせるって電話してきたの」
「それは大変」
「いいなあ、リン。両親亡くなっちゃってるし叔母さんたちは何も言わないし」
「結構あれだよ?お母さんと楽しそうに話しているのを見ていると羨ましく思っちゃうし」
「そう?あーでも、ごめんね。私まで裏切っちゃう」
「いいのいいの。グミは何にも言わず出て行ったけどラピスはちゃんと言ってくれたんだから許すよ」
「えへへ」
 ただ、ラピス、リン、グミの仲良し3人が消えてしまうことになる。しかも、グミはBに移った後、寮に入ってしまった。あたし、どうしよう・・・!勉強はしたくないし・・・。

「だめなものはだーめ!」
「え~!ハーゲンダッツ買ってあげるのにぃ」
「だめです!せっかくBに上がったというのに、あんな奴らとかかわる必要はありません!」
「ケチ」
 私は乱暴に扉を閉めて、職員室を去った。訴えても無駄だった。
 私は、この間のテストで全く書いてなかったのにBに上がった。私はリンが出て行ったあと、先生におかしいと訴えたものの、よく頑張りましたね、と聞いてくれちゃいなかった。
「あなたがグミちゃん?」
「あ、は、はい!」
「うふふ。そんなに緊張しなくてもいいのよ。あなた、不正したの?」
「え?」
 ルカ先輩とミキ先輩が近づいてくる。どうして知っているの・・・?
「私、何にも書いてないんです。なのにBになって・・・」
「もしかしたらリリィがやったのかもしれないわね、ミキ」
「ええ。どうしましょう、会長」
「今はダメよ。もっと大きなことになってから彼女を捕まえなきゃ」
「ええと・・・。リリィさんってここの理事長さんと仲の良いある企業家の娘ですよね?」
「そうよ。噂なんだけど、彼女権力を使ってテスト成績を改ざんしているらしいの」
「今までの被害者は何人いるかわからないほど。毎月のように被害者が出ています」
「・・・」
 テニス部期待のエース。今は副部長だが、中3の先輩が引退後、部長になるという。そしてリンの双子の弟・レンのストーカー。
「私、どうすれば・・・」
「先生たちは喜んでいるわ。それにあなたは釘を刺したいの?」
「・・・会長の言う通りよ。警察沙汰の事件が起きない限り、あなたたちの勘違いだ!って彼女の父親にわめかれちゃうから」
「はい、わかりました・・・」
 私は何となく、後ろめたい気分だった。

 体育祭の練習は学年ごとに行われる。中等部と高等部一緒に体育祭をするという、何ともハードなもの。中等部は第1グラウンドで練習している。
「きゃ」
「あ、ラピス、大丈夫?」
「ごめんね~!さ、立って」
 C組の生徒はここぞといいうばかりにいじめられる。私はまだしも、身長が132しかないラピスは可哀想だった。
「もうやだよう・・・」
 今回はグミが敵にまわってしまったことにより、C組内で険悪な雰囲気が漂っていた。一体、どうなっちゃうの!?