神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

ボーカロイド学園 第1話「入学式」

 私は学力の問題で担任からこの璃々杏学園という不思議な学園を紹介された。音楽に力を入れている学園だから音楽の成績が優秀なお前なら合格するだろう、と言われた。ふん、どうせ私は音楽以外はダメダメですよーだ!
 でも問題はここに入学してきた高校生のほとんどが中等部からのエスカレーター生なので(ちなみに外部入学者の定員は全体の300人の内100人)私はなじめるかどうか不安だった。
「こんにちは!」
「わっ」
 入学式が終わり、教室で担任を待っている間ぼや~としていたら金髪でサイドテールの女の子が話しかけてきた。その子の後ろには長い白髪の女の子もいる。
「ほ、ほら驚いてるじゃん。そっとしておくべきだよ・・・」
「なあに言ってんの!あ、私はネル。よろしくね!」
「よ、よろしく」
「私はハクです・・・よろしく」
「あ、うん。私はミクだよ」
 明るいネルちゃんと違いおどおどしているハクちゃん。でも胸はでかい。
「私たちはまあ、中等部からの成り上がりなんだけどさ、C組になるところでしたよ!って怒られちゃった」
「・・・?」
 よくわからない。クラス分けなんて先生が勝手にするものなのになんで・・・?
「ほら、ネル。外部入学生に説明なしはダメでしょ」
「あ、ごめん。ええとね、ここは成績によって3つのクラスに分けられるの。私たちのいるB組は凡人レベルだから留年はないよ」
「へえ」
「でもね、成績が下がるとバカのクラス・Cに落ちるから気を付けてね」
「うっ」
「プレッシャーかけないでよ、ネル。きっとミクちゃんも音楽の成績が優秀だから落ちないよ」
「あ~うん。それもあるねえ」
「そういえばどうしてここは音楽第一なの?」
「ええっと・・・どうしてだっけ、ハク」
「ネル・・・。去年習ったじゃん。創設者がたくさんの歌手を輩出したいからって」
 最初の気弱さから一変してペラペラしゃべりだした。
 話をまとめると、創設者は病弱で歌を歌いたくてもすぐ喉を傷めたりしたため、歌手への道は諦めたという。でもその創設者は音楽の教師になり、音楽の素晴らしさを教えることにした。でも、なかなか伝わらない。そう感じた創設者は定年間際になってこの学園を造った。そして今までにたくさんの歌手が輩出されているんだとか。
「はーい、皆さあん!こんにちわ!」
「!!」
 随分とグラマーな先生だ。と思ってると、途端にその先生はハクちゃんの元へ駆け寄り、その大きな胸をつかんだ・・・いや、揉んだ。
「ちょ!?」
「むう・・・。あたしよりでかいなんて。サイズは―」
「あああああ!もうやめてください!」
「ああ、ごめんねみんな。あたしはメイコ。ここの学園の卒業生でね、10年ぶりだよ。まあこの高等部は16年ぶりだね」
「・・・」
 随分とハチャメチャだ。ここって大丈夫なの・・・?

「はーいじゃあ明日から元気に来てね。来週からは部活継続うんたらかんたらで話があるらしいから。新入生は新規だろうけど。じゃ、さよなら」
「「さよなら!」」
 随分と軽いのにも呆れつつ、私とネルちゃん、ハクちゃんは一緒に帰ることにした。
「ね、ミクちゃん。知ってる?メイコ先生の元同級生の内1人がいまだにこの学校に残ってるって」
「え?そんな噂が?」
「ううん。噂じゃないと思うよ、ほら」
 ちらっと昇降口の3年生のところにたたずむ人を見る。・・・いい年をした人が制服を着ている。この人かな?
「こんにちは~!」
「ちょっ・・・!」
 無邪気にもネルは話しかけに行った。
「おお、こんにちはでござる」
「・・・」
 その反応にネルは声を失う。ネルはこ、この人は武士かよ!?みたいな顔をして私たちに苦笑いをする。
「あの、失礼ながらもあなたが・・・その16年間ここに通ってると」
「正確に申すと、高校1、2年生の時を入れて18年間でござる」
「へえ・・・」
「飽きたりしませんか?というか、そんなに留年しているのによく学園長は退学しろって言いませんよね」
「元々特待生だからよ」
「せ、先生!」
「おお、メイコ」
 先ほどとは違う服を着ている。丈の短いワンピース。先生もこれから帰るようだ。
「ふう。今日は目立たないようにってあれほど注意してたのに・・・」
「よいではないか」
「あ・の・ね!16年間おいてくれてるのはね、私とかカイトの厚意でもあるのよ!分かってるの!?」
「す、すまぬ・・・」
「ではあなたたちにご紹介するわね。特待生から一気にバカの奈落の底へ行った神威がくぽさんよ。私の元同級生のくせにね・・・」
「む」
 気にくわなかったようで、メイコ先生の頬を軽くたたく。ペチ。
「ちょっとお!事実なんだしいいでしょう?あ、そうそう。帰りの会で言い忘れてたんだけど、いつか中等部のC組に行ってほしいの」
「へ?」
「はい?」
「・・・?」
 私たちは何事かと首をかしげる。
「結構荒れているらしいの。女王として君臨していると宣言しているのは鏡音リンさん。双子の弟・レンさんはA組なのにねえ・・・」
「つまり、その」
「カイトから救援要請があったの。カイト自身は隣のB組担当なんだけどC組のかわいい女教師が倒れたあ~!とか泣きついてきたからむかついて」
「・・・」
 つまり、そのカイト先生と親しいのだろうか。でも中等部とか凄く気になる。
「ね、行ってみようよ明日にでも」
「ネル・・・。怖いよ、女王だなんて」
「大丈夫!私たちは先輩だよ?ね?安心して!」
「う、うん・・・」
「じゃあ、明日の放課後中等部の職員室に行ってカイトに会ってきて。多分報酬はハーゲンダッツかスイカバーね」
「あ、はい・・・」
 季節外れのアイスかあ・・・と私はのんきに思った。
「うむ。カイトも行けぬとは強敵なのでござるか?」
「うん、そうみたいね。あんな子、ここから追い出したいってぐちぐちぐちうるさいの」
「では気を付けておくでござるよ」
「はーい!」
 私たちは先生たちと別れて歩き出した。