神崎美柚のブログ

まあ、日々のことを書きます。

ヤンデレ娘とイケメン王子様 第1話 衝撃

「たーちん、私ってもう終わったよね・・・」
「ううん。そんなことないって!気にする必要ないよ?しかも噂、だし」
 放課後、私の家。
 私は正道凉。通称・すーちゃん。いわゆるモテ期に今いて、毎日が薔薇色。何度告られたのやら。
 しかし、昨日事件が起きた。たまたま告白してきた男子が私の好みで半年前から付き合うこととなった。私は帰宅部だけど、彼はサッカー部。私はあまりデートができないからサッカー部のマネージャーになった。そんな彼が浮気なうだと私のクラスのLINEで知った。
「まあまあ、元気だしてよ」
「たーちんは中学校の頃からラブラブだもん・・・」
 私の友人たーちんこと島崎妙子は中2の頃から彼氏と付き合っており、高2の今でもラブラブすぎて眩しい。
 LINEをまた見てみる。
『ビッグニュース!!その2 すーちゃんの彼氏が何と華道部の女子と何やら話しているところが目撃された!』
「・・・は?」
 華道部と言えばおしとやかで美しい女子が集まる部活。私も入ろうとしたが、部長が「ふさわしくない」と言い、あっさり断られた。このベリーショートのせいかな。
「もしかしてとうとう水野さんに目つけたかな」
「ああ、華道部の部長でしょ?綺麗だよねえ」
「日本の平安時代にいた貴族みたいだよね」
 まっすぐの黒髪に整った顔。なんでも入学式の日に勧誘されたとか・・・。
「ねえ電話したら?出れなかったらそれ真実だよ」
「いや。直接行くから」
 私は走り出した。

「ねえはっきりしてよ。何のために私を呼んだの?」
「・・・水野さん、俺と付き合ってく」
「嫌だって言ってるでしょう?私は年下が嫌いなの。しかも彼女いるじゃない」
「凉は確かに可愛くていい子だ。でもサッカー部のマネージャーになってまで俺に付きまとう。うっとうしいんだよ」
「今の聞いちゃったよ?」
 顔面蒼白になる彼氏の相田雅輝。そして冷静な水野華蓮先輩。
「あらまあ。どうしたの?」
「雅輝、先輩に何してたんですか?」
「告白してきたわ」
「えっ・・・いや・・・その・・・」
「雅輝は私のものなのに。何で何で何で何で何で何で」
「私は失礼させていただくわね」
「ひぃっ・・・」
 絶対許さない・・・!

『まさかのすーちゃんヤンデレ発覚!?』
「LINEに早速書かれてるよ」
「たーちん、あれ普通だよね」
「いやいや。あれはないねえ」
「嘘っ」
 朝早い教室にクラスメイトがたくさんやってきた。
「よお!ヤンデレ娘!」
「・・・」
 私のモテ期は終わった。
「おーい、転入生がいるぞ」
 窓から校門を見ると、リムジンがあった。か、金持ち!?
「ねえ、すーちゃん。行こうよ」
「うん!」
 たーちんだけは裏切らないでいてくれた。

「うわっ・・・」
「あの相田先輩を殴った先輩じゃない?」
 ひそひそと皆が話している。でも私は気にしない。これを機に素を出そう。
「うっさいな。小声で人の悪口言いやがって!後輩のくせによ」
「あ、ご、ごめんなさい!」
 その後輩が逃げようとすると、転入生が出てきた。
「やあ。京子」
「はあ?」
「すーちゃん、知り合い?」
「ううん。つーか、こんな奴親戚にもいねえ」
「京子じゃないのかい?なら名前は何と言うのだ?」
「正道凉です」
「ふむ。顔が京子そっくりだ」
 にこりと微笑まれ、背中に冷たい視線を感じた。

「えー転入生のえー前田ルトソンくんだ。えー父親が日本人とフランス人のハーフでえー母親がイギリス人とアメリカ人のハーフだそうです」
 えーがやたらと多い担任。そのルトソンくんは先程の爽やかな笑顔は見せず、イライラしているようだった。
「席はどこですか」
「あ、ごめんね!えーそこのほら、えー正道さん・・・えーベリーショートの・・・」
「ああ、京子に似ている子の隣か」
 担任がゆっくりと話すので、とりあえず無視してこちらに来ている。
「何だ?この百合」
「ああ、その席に前座ってた女子生徒の為に置いてるだけで」
「そうなのか」
 彼はゆっくりと微笑んだ。

 ルトソンくんの席には吉田茉莉という名の女子生徒が座っていた。元から根暗な彼女はあまり喋らずただ黙って皆の話を聞くタイプの子だった。
 そんな彼女がいきなり自殺してしまった。皆は何も文句を言わない優しい彼女をいじめるだなんてと否定していた。でも、理由は何となく分かった。
『ここは私の世界じゃない』
 時々、ぽつりと言うその言葉は皆聞いていた。担任はそのことを聞き、愕然とした。
「凄ーい!おばあちゃんにも別の外国の血が!?」
「大したことはないさ」
 ルトソンくんはあきらかに怒っている。女子からの質問攻め。いつ終わるのかは分からない。
「そろそろ質問はやめてくれないか。そこの凉と話したい」
「えー止めときなよ~ヤンデレだよ!?」
「凉」
 はっきりと名前を言われた。彼の目は優しかった。
「何?」
「その、ここに前座ってたとかいう女子のことを教えてほしい」
「いいよ」
 私が茉莉ちゃんのことを説明し終えると、彼は青ざめた。
「俺のいとこだ。まあ俺の母さんの妹は日本人と韓国人のハーフと結婚したらしいが」
「道理で何かヨーロッパ系が混じってそうな顔を・・・」
「茉莉が自殺したのは両親が夫婦ケンカしてたからだ」
「え」
 クラス中の人がルトソンくんを見る。初めて知ったことだ。
「あいつは中二病だった」
「嘘!そうだったの!?」
「普段から自分の中に世界を作っていたから黙っていた」
「へえ・・・」
 黙っていると、ルトソンくんはどこかへ行ってしまった。

「校長室へ?」
「昨日のあれ暴行したって先生が」
「え~?少し殴って病院送りしただけじゃん」
「あの華道部の先輩、今まで気に入らない後輩たちをすーちゃんみたいにさせて退学させたらしいよ」
「はあ?あんな清楚で可憐な先輩が?」
「悪女だって」
「・・・とりあえず退学にならないようにする」
 私の足取りはとても重かった。

「正道さん、座りなさい」
「は、はい・・・」
 校長の威圧感。もう嫌。
「昨日、相田雅輝くんを殴ったというのは本当かね?」
「はい。ですが、私の怒りに火をつけたのは水野華蓮先輩です」
「ほほう。過去にも彼女が原因だとわめく生徒が何人もいたが・・・彼女はまじめだ。他人の怒りを爆発はさせやしないだろう?」
「しかし、事実なんです!」
「証拠があるのかね?」
「・・・」
 まるで先輩による完全犯罪だ。ひどい。ひどすぎる。
「すみません、校長。防犯カメラにはばっちりその先輩のせいだと映ってますよ」

「ル、ルトソンくん!?いきなり何だね」

「校長、ほら」

 私には見せないようにして校長にだけ昨日の暴行事件を見せる。そういえば、最近防犯カメラ付けたんだね。

「うむ・・・。すまなかったな、正道さん。水野華蓮については過去に疑われた事件についても調査しよう。ま、どっちにしろ彼女は退学だ。しばらく自宅謹慎させようかね」

「あ、ありがとうございます!」

 ルトソン君がにこっと微笑んだ。

 

「さっきはありがとう!」

「いやいや。君の友達の島崎さんがどうせならルトソンくんが校長室に行って、と防犯カメラの映像を解析したUSBを渡されてね」

「・・・一度、たーちんは学校中のパソコンのデータ吹っ飛ばして校長に怒られたことがあるんで気まずいんでしょう」

「ははっ。そうだったのかい?つまりハッカーなのか?」

「いや。本人いわくパソコンを扱ううえでの必要知識と」