今後のこのブログについて。
週に一度、更新します。小説家になろうで掲載してるような暗いお話ではなく、恋愛ものに挑戦したいと思います。
来週の月曜から毎週月曜更新にします。
メガミ様 第二話 連続殺人事件─9月27日~9月28日─ side.?
昨日殺した女でもダメだった。
2年前、半殺しにしたからとどめを刺したのに。
全く何の感情も思い出せなかった。
あの女に対して、私は何を思っていたのだろうか。
憎悪? 嫉妬? 嫌悪? 好意?
ああ、思い出せたらいいのに。
27日。
今日は2年前に聴力を失わせた女とその恋人を殺した。
「泣いてばかりで気持ち悪い」
彼女のその声ははっきりと覚えている。
きっと、私は彼女に対して嫌悪を感じたのだろう。
分からない。分からないけれど、殺さないとダメな気がする。
28日。
酔っぱらった男を見つけた。ああ、あいつだ。私を殴ったあいつだ。2年前に片足を悪くさせたのに。
殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ──
メガミ様 第二話 連続殺人事件─9月27日~9月28日朝─ side.優太
昨日、殺されたのは元3-2の小泉茉莉愛。彼女はいじめグループのメンバーで、当然のごとく元3-2メンバーは警察に呼ばれたらしい。しかし、いじめグループはけろりとしていたものの、それ以外の子たちは2年前のことを思い出し泣いたり吐いたりと大騒ぎだったらしい。
──このことは篠原からLIMEで聞いた。怒っているようで、直接会う気はない、と締めくくられていた。
「誠。遥香に疑いはかからなかったのか? あの場にいなかったし、アリバイもない」
「警察も昨日のそれ以外のメンバーの様子を見て絶対違う、と確信したらしい。それ以外のメンバーは元いじめグループに会ったり思い出したりするだけで吐き気がするとのことだ。遥香は特にヒドいってさ。精神科に通っていたらしい」
「へえ」
篠原は怒っていたが、誠は全然違った。そのため、中央通りからかなり離れた誠の家にお邪魔している。母さんも安心だ。
「遥香……無事だといいな」
「お前ら付き合えばいいのに」
「遥香は俺みたいな男は好みじゃない。幼なじみから進めはしないさ」
「へえ」
ニヤニヤした顔つきで見てくる誠。何でそんなにくっついてほしいんだ?
遥香の好みはスポーツのできるイケメン。だから絶対俺じゃない。
「殺人事件が起きてるからうろついたら危ないし……」
「お前の母さんは心配性だからな」
「……あ、ああ」
「出来ることと言えばこれ以上探らないことだ」
「……は? 」
「叶が怒っていたのはお前の2年前の態度のことだ。女子は女子の世界があるとはいえ、お前は幼なじみが傷ついているのに気づかなかった」
「……そう、なのか? 」
「ああ」
つまり、篠原は俺に探る資格はないと言っているのだ。幼なじみである俺は頼れない、と。
その後、気まずくなり、俺は誠の家を出た。住宅街を抜けたところにある西通りは活気あふれる町のはずだが、中央通りの殺人事件を考慮してか店は閉まっているのが大半。
「犯人は捕まっていないわけだから早く帰らないと怒られそうだ」
自転車に乗り、さっさと家に戻る。俺は卒業アルバムを引っ張り出し、改めてきちんと3-2を見る。
──集合写真が、ない。個人個人の写真もないのが大半で、いじめグループに属してそうなチャラい感じの奴らは笑顔で写っている。
(遥香はよく見ると笑顔ではなく、作り笑いだった)
「……書き出してみるか」
『・網島省吾
・磯部久友
・植村庄司
・小泉茉莉愛
・白魚菜々
・不知火灯
・瀬尾梨々花
・西内茜
・西口研吾
・南田琢磨』
──たぶん、人数的にいじめグループだろう。しかし、写真は違和感があった。9月頃撮ったはずなのに10人は夏服じゃなかった。他の人もそうだ。
「そんなにいじめはひどかったのか? 」
気になるばかりだった。
翌日。学校を休みたい気分を堪え、学校に行くとなぜかクラスの女子にいきなり手を引っ張られ、体育館の陰に連れて行かれた。
「ねえ、土谷君。2年前のことを探ってるんだって? 」
「あ、うん……」
「ほんと、やめてくれないかしら」
「……どうして? 」
「まあ、私のことを忘れたのね。水島香織。中学校一緒だったじゃない」
「……そうだっけ」
「とにかく、関わらないで。全てを知って絶望するのはあなたなのだから」
「え」
「私は何となく察してるけど、あなたなら吐きかねないわね」
そう言い残し、彼女は去った。なぜ、ここまでして止めるのだろうか。
メガミ様 第一話 行方不明─9月27日~9月28日朝─ side.叶
私は優太にメッセージを送り、美佳の住むマンションに向かう。美佳は私や遥香の親友。家出した遥香と一緒にいたらしい。でも、その遥香が昨日からいないとか。
「美佳、私だよ、叶だよ」
「あ、叶」
美佳はいつもの笑顔ではなく、疲れた顔をしていた。側にいてあげないと。
「美佳。今日は泊まるから」
「ありがとう。──遥香、どこに行ったのかな」
「捜しに行くとか言いかねないから側にいるね」
「すごく助かる……」
2年前の事件により、元3-2のメンバーは大半が高校に行けていない。噂によれば、転校しても上手くいかなかった子もいるとか。
美佳もそうで、母親とここで二人で暮らしている。母親は夜遅くまで働き、美佳をサポートしている。
「小泉茉莉愛がまさか今更殺されるなんてね……」
「そういえば、加護愛梨と流翼とつるんでいたっけ? 」
「3人は主に金銭の巻き上げ担当だよ。2人は2年前に殺されたけど」
「へえ」
私は遥香とお昼休みによく会っていたし、噂はよく聞いていた。やたらと静かな教室。教師も淡々と授業をしていたらしい。
男子はこういう噂をまったく耳に入れない。あいつもそうだ。誠の親友じゃなければ話だってしたくない。
「怖くて昨日帰ってきてから外に出れてないの」
「そうだよね。よし、お昼ご飯にしよう」
「久々の叶のご飯! 嬉しいよ」
少しだけ笑顔が戻った。よし。美佳の好きなスパゲティを作ろう。
昼食後も、私達は明るく過ごそうと努力した。遥香に悪いから。だから明るく振る舞った。
翌朝。学校があるので早起きすると、美佳がいなくなっていた。美佳は学校なんてない。なのに……。
「どうしよう、探さないと」
私は無断欠席して誠に心配かけたくないのでLIMEする。少しキツいから、と。
私はとりあえず、美佳のマンション付近を捜した。東通りをうろつくが、小学生とかサラリーマンしかいない。私服姿の高校生なんているはずもない。
どこなの、美佳!
メガミ様 第一話 行方不明─9月26日─ side.?
私は、今日も人を殺す。
悲しいという感情、
ツラいという感情、
怖いという感情、
それらを思い出すために。
「きゃあああ! 来ないで、来ないで、──! 」
私は、彼女が叫ぶ名前を理解できない。私は感情と共に記憶もなくした。
「嫌、いや、いやあああああ!! 」
泣き叫ぶ彼女を刺し殺す。首に刺す。それでも何とも思わない。楽しい、とも悲しい、とも思わない。
ただ、覚えているのは2年前もそうだったこと──。
メガミ様 第一話 行方不明─9月25日~26日─ side.優太─
「ねえ、優太。女神様って……信じる?」
幼なじみの木戸遥香に突然そんなことを言われたのは3日前のこと。その時、俺は鼻で笑った。
──遥香が、この時、助けを求めていたなんて知らずに。
3日も学校に来ない遥香。あの時、遥香は無理にそうだよね、と笑ったのではないか?そう思ってしまう。
そこで、放課後。生徒会室(俺は一応生徒会の役員だ)に親友を招いて話すことにした。
「んで、その女神様について知りたいのか」
「ああ」
「……女子の間で流行っているとか。俺は信じられないが、そんなのがいるらしい」
親友の隼誠。俺こと土谷優太とは小学校の時から仲良しだ。
そして、彼女がいるため女子のこのについてはそれなりに詳しい。(俺の場合、遥香とは友達だからな……)
「ちょっとお、信じられないってどういうことよ!」
「胡散臭いだろ。中学校の時のキューピット様並みにな」
「ううっ」
いきなり現れたのは誠の彼女、篠原叶。やかましい奴だが、遥香の大親友でもあるいい奴だ。
バシバシとひたすらに、彼氏である誠を叩き続ける篠原に詳しいことを聞くことにした。
「なあ、篠原。女神様って……」
「キューピット様のように嘘じゃない、神聖なお方だから。あ、遥香のことならあんたが詳しいでしょ」
「でもな、女子は女子同士での秘密があるだろ、女子特有の」
「遥香はそんな子じゃない……ハズ。うん、大丈夫」
「そもそも何で女神様に頼るんだ?」
「願掛け、かな。遥香はね、キューピット様が偽物だと知って一番傷ついていたんだから」
「はあ?」
2年を越えて告げられた真実にただただ驚愕するしかなかった。
遥香はクラスの女子がキューピット様、キューピット様、と騒いでいても全く気にしなかった。あんなの面白くない、と。
驚愕する俺の前に紙が置かれた。電話番号が書かれている。顔をあげると、いたのは黒髪を三つ編みにしている清楚な雰囲気の少女。
「あーーっ!!偽キューピット様!」
「その名前はやめてくださるかしら?私は今、天使(アンジュ)なのよ。見事に生まれ変わったのだから」
「あ?でもよお、叶、偽キューピット様はもっとこう……髪色とか雰囲気が……」
「や・め・な・さ・い」
笑顔で怒る彼女は去り際、俺に囁いた。
「あなただけに情報をあげるから、電話をちょうだい」
きょとんとする俺に誠と叶が詰め寄ってくる。
──早く捜したいんだが。
「あんな女のことは無視しなさい」
「そうだぞ、騙されたらどうなることやら」
「大丈夫だ。もうこれ以上情報がないんだろ、お前等」
親友とその彼女は置いてきぼりをくらいたくないため、必死についてくる。鍵を返そうと廊下を歩いていると、ふと屋上に誰かがいるのが見えた。
(遥香っ……!?)
その姿はまさしく、幼なじみの遥香だった。しかし、すぐにいなくなり幻覚だと思うようにした。
夜。あの偽キューピット様に電話をすることに。もう頼れるのはそこしかない。
「もしもし」
『あ、電話してくれたのね』
「……ええ、まあ」
『女神様の元に行く方法なんてないわ』
「……」
『謎を解くためには、キューピット様事件を調べなさい』
そう告げると、一方的に切られた。もう一度かけ直しても、繋がらなかった。
俺は久しぶりに卒業アルバムを引っ張り出し、遥香の写真を探す。──3-2。笑顔の遥香の写真。同じクラスではないため、俺もよくは知らない。
明日と明後日は休みだ。このクラスについて調べよう。
翌朝。早起きをしてみたが、両親はまたいなかった。オムライスがテーブルの上にあったので、食べることにする。
篠原に頼み、旧3-2の一部生徒を集めてもらった。近くのカフェで待ち合わせている。
食べ終わり、俺はカフェへ。女子率の高いカフェだが、篠原のチョイスなので気にしない。
「あ、来た来た」
「篠原、すまないな」
「こんにちは、牧原です」
「俺は斉藤です。こっちは汐留」
「あ、うん。よろしく」
汐留という名前の女の子は車いすに乗っていた。手には紙とペン。筆談しかできないのだろう。
「遥香ちゃんが行方不明だなんて心配です。私達のせいかもしれないと気が気でありません」
「どういうことだ? 」
「汐留早苗。彼女は陸上部だったんですよ。ひどいいじめにあって聴力を失いましたけど」
斉藤くんはずっと、汐留さんに手話で会話を伝えている。
汐留早苗。そういえば、そんな名前のすごい元気な女子がいた。その子なのか?
「3-2はある女子がリーダーでした。彼女は卒業後、どこにいるかは分かりませんけど……遥香ちゃんも傷つけられた一人だと思います」
「……でも、もう2年も昔のことですよね」
「遥香ちゃんは、好きな人のことでからかわれ、キューピット様に相談しようとしました。でも、キューピット様はいなくなっていました」
「……」
もし、女神様について知って相談したとしたら。
脳裏にそれがかすめた。
「3-2はいじめグループ12人、それ以外が16人のクラスでした。転校してしまい、最終的にはいじめグループ10人、それ以外9人となりました」
「……ん? いじめグループの方は、なぜ……」
「通り魔による殺人事件に巻き込まれたみたいなの。……このぐらいでいいかな」
3人は青ざめた顔をして、立ち去った。
「……あんた、どうしてこんなことを調べてるの? 私、あまり乗り気じゃないけど……遥香のことに関係あるわけ? 」
「多分……」
篠原は気味悪い、と言って去った。
俺が能天気にすごしていた2年前。遥香たち3-2には何があったのだろうか。
「図書館に行くか……」
図書館の地下。過去の新聞がある。
とりあえず通り魔殺人事件を調べてみよう。おそらく、ニュースになったとしても、ほんの少しだろう。
──『7月21日に登山に出かけた後、行方不明になっていた女性(24)が遺体となって柏山で発見された。警察は殺人事件として捜査をすすめる方針だ。』
通り魔殺人事件とはほど遠い気もするが、その次の事件はそうだった。
『女子中学生二人(14)、(13)が中央通りの路地裏で遺体となって発見された。警察は柏山女性殺人事件との関連性を調べている。』
……これか。これなのか。
すると、携帯の着信音がなった。大慌てで図書館を出る。
「はいもしもし」
『優太、早く帰ってきなさい。事件があったそうよ』
「……え」
『中央通りで殺人事件ですって。母さんもそれで心配になって……』
「分かった」
中央通りとは、図書館の近くだ。俺の家も、高校も、そこにある。
「うわ、本当だ」
歩いて帰る途中、警察の車にすれちがう。確かに事件は起きたらしい。
「ただいま」
家に帰ると、心配顔の母さんがいた。
「殺人事件とは物騒だよ……母さんも一緒にいたいけど」
「仕事なんだから、行ってきなよ」
「……」
ワガママ・プリンセス 第三話「舞踏会(上)」
今日は舞踏会。頼んでいたドレスはガートリが持ってきてくれた。ヒメアの前で試しに着てみる。
そこに、お母様が現れる。あら、どうしたのかしら。
「そんな派手で、しかも露出の激しい服をよく着れるわね」
お母様の目は冷たい。そんなお母様はきっちりとしたお洋服。またしても参加しない気らしい。付き合いが悪いと他国の王様達に噂されかねないのだけれど、いいのかしら。
「王妃様、その言い方はよくないと思いますが」
「ヒメア、私はそんな服気にくわないわ。今日も参加しないから」
「挨拶ぐらいしてください! 他国の方々も疑ってますよ!? 」
ヒメアの剣幕に驚くようなお母様ではなかった。お母様は、ヒメアをキッ、と睨みつけると部屋を出て行った。
「ねえ、ヒメア。お母様はなぜそこまで嫌うのかしら」
「……王女様の母方の祖母にあたる方が踊り子だったのですよ。反抗心でしょう」
「変わってるわね」
「しかも彼女はまともに王妃様の育児をなさらず、王族たちのご機嫌取りばかり。反抗したくなるのは分かるけど、引きずりすぎかと私は思います」
ヒメアはにこりと微笑み、まあ気にすることではありません、と言って出て行った。
私は外の世界にいた頃のお母様とお父様をあまり知らない。少しでもいいから、知りたいなあ。
着替えたあと、ガートリに言って調査をしてもらうことにした。グラッサ、メルトリが来る前にお母様を引きずりださないと!
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王女様も人使いが荒い。カスティッチオのことを細かく知る人など、そういるのだろうか。うむむ。
「そこのメイド」
「あ、はい? 」
「カスティッチオのことについて聞きたいのだが。特にこの国の王妃様の関連のことを」
「噂話ですけど、王妃様のお父様は豪遊の果てに亡くなったらしいですよ。天才数学者らしくない最後ですよねえ」
「……そうか」
王妃があそこまで堅苦しいのはそのせいかもしれない。そのあとも噂好きな貴族などに話を聞き、まとめた。
誰もいない書庫のテーブルでそれを読む。
「……天才数学者と王宮の踊り子は結婚する気などなく付き合い始めた。数ヶ月後、踊り子は体調を崩し、辞めたあと5ヶ月くらいして子供を産んだ。無理をして貴族達の前で踊り続け、挙げ句の果てに蒸発」
「そして、娘の結婚式で自殺したのよ」
ヒメアさんが横にいた。明らかに、怒っている。
「王女様には伝えるべきではありません。彼女の精神はまだ幼いのですから、傷はつけないでください、ガートリ」
「──はい」
この事実を伝えれば、怖がる顔が見れるだろう。しかし、ヒメアさんが止めるのならば……やめておこう。